ブッカーと呼ばれる人がいます。プロレスにおけるマッチメイクや勝敗、ある種の筋書きを決める人をそう呼びます。
プロレスとはとても不思議なスポーツです。それは、アマチュアの存在しない所が大きいと思います。
“Don't Try This at Home”これはプロレス最大手のアメリカ団体、WWEが自宅でプロレスの真似をしないように啓発した標語です。
アマチュアがいないと言うことは、誰もその痛みを知る事ができません。だからこそレスラーは、痛みの伝わる技を研ぎ澄まし、演出し、血を流し、過剰になっていったんだと思います。
映画レスラーの主人公ランディはかつて、聖地マジソンスクエアを埋め尽くす観客の声援を浴びる人気レスラーでした。
今ではすっかり落ちぶれて、メリビルのおんぼろなトレーラーハウス住み、各地のプロレス小屋を転々とする日々を送っていました。
もう一度返り咲きたい。自ら痛み止めをモモに打ち、どんな小さな会場でも全力でプロレスをするランディ。
彼には二つの道がありました。一つは死ぬまでプロレスを続けるか、もう一つはプロレスを諦めて幼くして捨てた娘の元に帰るのか。
ランディは一瞬、幸せを掴みかけました。まともな人生を送れるきっかけを得たのです。
けれども、電灯に吸い寄せられる火取虫のように、ランディの心には会場のライトが輝いていたのです。
彼はどんな決断を下すのか。最後に、心と魂を秤にかけたランディの選択に涙が止まらなくなりました。
ベネチア映画祭の金獅子賞、ミッキー・ロークの最高傑作、映画レスラーは是非ともおススメです!!