ベビーパウダー山崎

アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
悲劇も喜劇もイコールで描かれ、中間が失われている躁鬱的な表現。マンハッタンに近づく船上からの画で映画が始まるが、まるでそれは密航者の視線のようで、旅行者のように飛行機でこの地に降り立つわけではなく、荷物を詰めた車で定住地を求めているわけでもない、波に揺れ流離う船、これがアケルマンでありアケルマンの表現。
映像は「私」の表現手段でしかないが、演劇、歌やダンス、その肉体をリアルに見せる舞台には心を許している。少なくとも「物語」よりかは確実に信用している。それぞれが記憶の話を聞かせるが、すべてアケルマンの自分語りに聞こえてくる。しつこい長回し、本作だけではないが、母親以外は個人を映していてもハリボテの外見は入れ替え可能で、その中身はアケルマンが息をひそめて存在している。