こたつむり

あなただけ今晩はのこたつむりのレビュー・感想・評価

あなただけ今晩は(1963年製作の映画)
3.9
世の中の大半は余談で出来ている…そんな素敵な法則。

舞台はパリ。
主人公《パトゥー》にジャック・レモン。ヒロインに《イルマ》にシャーリー・マクレーン。そして、監督はビリー・ワイルダー。って万全の布陣じゃないですか。そりゃあ、ニヤニヤが止まらないのも当然ですよね。

でも、脚本が粗いのも事実。
現実味、整合性、伏線の張り方…等々、ツッコミどころが満載なのです。

しかし、本作は大人のファンタジィ。
物語の骨格からして、警官と娼婦による“禁断の恋物語”ですからね。二人の行く末を温かく見守りつつ、時には「あふん」と変な声を出しながら鑑賞すべき作品なのです。細かいことを言う輩は馬に蹴られて何とやら…なのです。

それにラブコメの重要なポイントは。
“主人公に共感を抱けるかどうか”ですよね。
だから、純真で真面目な《パトゥー》は問題なし。彼女を愛するがあまりに、身体を張る彼の姿は涙なしでは語れません。淑女の諸君は、彼のような伴侶を探すべきでありましょう。

また、もう一つのポイント。
それは“ヒロインが可愛いかどうか”。
勿論、それは外見も然ることながら、中身が伴っていることも重要。《イルマ》の場合は、機転が利く様が冒頭で提示されますからね。及第点どころか“天使”レベルですよ。

そして、出来ることならば。
物語を彩るマスコットがいれば言うことなし。
そうなると《イルマ》が飼っている《犬》を連想しますが…やはり本作で一番キュートなのは《カフェのマスター》でありましょう。外観は…ちょっと厳ついかもしれませんが、彼の口癖無くして本作を語ることは出来ません。

まあ、そんなわけで。
コロンの香りが漂ってくるほどに濃密な作品。
粗い脚本もビリー・ワイルダー監督の手にかかれば「ええい、監督はバケモノかッ」と言いたくなるほどの傑作に早変わり。少々、上映時間が長いのが瑕ですが、休憩しながら愉しめば良いのです。そもそも、人生なんて余談の延長線。他人様に迷惑かけずに愉しんだもの勝ちですよ。

あふん。
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