まっつん

ゾンビ/ディレクターズカット完全版のまっつんのレビュー・感想・評価

5.0
偉大なるゾンビ映画のパイオニア、ジョージAロメロ監督が先日77歳で亡くなられました。本当に悲しい気持ちでいっぱいなのですがここで彼の大傑作を見返してみました。

まずゾンビって何なのか?ってところから書きたいと思うんですけど、ゾンビが他のモンスター達と一線を画す部分て「人に考えさせるきっかけを与える要素が多分にある」というところだと思います。本作だと消費社会というものへの皮肉が込められていますね。生前の本能のままに動くゾンビたちが大きなショッピングモールにわらわらと集まって、ブラブラしていると。観てると「これ俺らと一緒じゃん」って思うわけです。だから実は人間とゾンビってそんな変わらないのでは?と考えさせられるんですね。ロメロの作品にはそういった社会的、哲学的な問いが必ず入っており、毎回彼自身の中で描きたいテーマをゾンビを通して描いていると。

またゾンビは非常に民主的なモンスターと言えます。誰だってゾンビなれるし、ゾンビは社会的な地位や身分は一切関係なく全員ぶっ殺してしまうわけです。でも社会が崩壊するとどんな形であれ地位や身分は何の意味も無くなるわけです。その反動で暴徒と化す人間も描かれているという点でも素晴らしい作品だなと思いますね。

今作はいくつかのバージョンが存在しておりまして、今回はディレクターズカット版を観ました。アルジェント編集版は非常に勢いのある出来になっていると思います。対してディレクターズカット版は長閑かな音楽が流れ、冷たい終末観が漂いまくっています。観てると「あぁ、なんかこのまま世界終わっちゃうんだな」みたいな笑。

さらに始まり方とかも好きで余計な説明とか無しにパニック状態のシーンから暴力的に始まると。やっぱ映画の始まり方はこうであって欲しいなと思いますね。

というわけで非常に惜しい人が亡くなったなと思います。彼の作るゾンビ映画はオリジネイターの凄みが詰まっていて他の追随を許さないものばかりでした。R.I.P