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レミーのおいしいレストランのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

4.5
数あるディズニーおよびピクサー映画の中でも特に好きな作品の一つです。ピクサーらしい躍動感あふれる映像を存分に味わえると同時に、後述するようディズニーアニメ最盛期の伝統をきっちり継承したバランスのよい映画になっています。

おそらく今後数カ月でFilmarksのタイムラインを賑わすだろうと思い本作を再鑑賞してみましたが、公開時以来でストーリーを忘れていた方も、ドブネズミ(ラット)が帽子の中で見習いシェフを操って料理をするという奇想天外な設定だけは覚えているのではないでしょうか?舞台がパリとオシャレ(屋上から景色を眺める場面はそれだけで胸がいっぱいになりますね)なのもズルい!

ディズニーアニメらしく動物が主人公なわけですが、実際には衣食住を単にその要求を満たすべきものとは見なさずアートとして極めて堪能しようとする人間の「文化」に対する賛歌になっているのも面白いです。アニメだけど料理はどれもめっちゃおいしそう。小さいオムレツがかわいい。

本作は注意して見ていくと過去の様々なディズニー作品の影響を発見できるけれど、まずパッと思い浮かぶのは「リトル・マーメイド」と「ノートルダムの鐘」。

作中に入れ込まれた様々なメッセージの中で特に鑑賞者の子供に訴えたいのは「○○の子供として生まれても××の世界で□□として生きてよい」という思いに他なりません。ディズニー・ルネサンスの最初の作品である「リトル・マーメイド」は人魚の子供として生まれても地上の世界で人間として生きてよいという物語ですが(本作の冒頭でもさりげなく二足歩行に言及しています)、本作のレミーは害獣であるドブネズミの子供として生まれてもキッチンで料理人として生きていきたいと奮闘。このディズニー作品の伝統的構図は新米シェフのリングイニにも当てはまりますがこれはネタバレになるので観てのお楽しみで。

「ノートルダムの鐘」についてはパリが舞台なのはもちろん、実在しない想像の話者との対話を通して描かれる理想と現実の葛藤が共通しています。また、同作の特殊性として度々指摘される悪役が特殊能力を持たない普通の人間(ディズニーマジックからの脱却)であることも同じですね。

ファンタジックな設定とは裏腹に、登場人物たちの直面する様々な問題が非常に現実的なのも興味深いです。実際この映画が公開された頃は、パリでレストランを営むのに必要な多額の経費のためどの店も経営に苦しんでおりビストロへの転換が流行した時期でした。今度外食するときには本作を思い浮かべながらそんな料理店の舞台裏を想像すると... 食欲が落ちるかもしれませんね😅
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