このレビューはネタバレを含みます
原作は中学生のときに読んだ。当時は全く理解できなかった。今は少しだけ分かる。
直子
もしあなたのことを傷付けたのだとしたら、それはわたしの傷でもあるのです。
永沢
自分に同情するな。
自分に同情するのは下劣な人間のすることだ。
村上春樹の曇天の夜明けみたいな世界観はたまらなく好き。その中でこそキラリと光る一節が心に響く。
宮沢賢治の夜鷹の星然り、銀河鉄道の夜然り。皆生きている以上他の誰かを傷つけてしか生きていけないのだろうか。悲しいな。互いにそういった側面を享受して、暗黙の了解的に抱え込んで生きていくのか?悲しいけど、何も考えず無意識にひとを傷つけて平気な顔して笑って生きる人生よりはずっといい人生だと思う。僕は。一般的にはどうか知らんけど。悲しみや虚しさを理解し合い、自身の醜さを互いに自覚してこそ、喜びもビビットに感じられるのかもなと思った。誰に対しても都合の良い立ち回りをすることは可能なのかもしれないけれど、それは誠実ではない。選択することを恐れないで、本当に大切なひとを大切にしていきたい。エゴイストにならないように常に自分を見張りながら。
キズキもワタナベも心の底から直子を愛していた。しかし自分のエゴイスティックな欲求に耐えきれなかったのではないかと思う。ワタナベのその後の人生はどんなだろう。
人生の多くの部分はメタフォリカルな行為こそ美しい。哲学が宿る。