akrutm

美しい庵主さんのakrutmのレビュー・感想・評価

美しい庵主さん(1958年製作の映画)
3.8
バーのマダムとの関係を断ち切るためにガールフレンドに連れられてやって来た、彼女のおばが庵主をしている田舎の尼寺で、将来の庵主候補の若い尼さんとの交流を通じて、自分の生き方を考え直す大学生を描いた、西河克己監督の青春ドラマ映画。

芦川いづみが尼さんというニッチな役で出演している点が貴重なので鑑賞したが、どちらかというと主役は小林旭と浅丘ルリ子が演じている大学生カップルである。内容的にも軽いコミカルな作品だと思っていたが、小林旭が演じる大学生が庵主を将来継ぐことが期待されている芦川いづみの苦悩を知って改心していくという、かなり正統な成長映画だった。有吉佐和子の『美っつい庵主さん』という短編小説が原作ということで、当然といえば当然かもしれない。ただし、そうは言っても、芦川いづみと対比させるために、その他の尼さんたちはコミカルに描かれているし、コミカルな演技を得意としていたこの頃の浅丘ルリ子も軽快である。

この映画は小林旭と浅丘ルリ子のコンビの発端となるような作品であり、本作後に渡り鳥シリーズなど二人のコンビ映画が制作されていく。ちなみに、映画の中では芦川いづみは将来の庵主候補であって庵主ではないので、厳密には「美しい庵主」は東山千栄子を指していることになる。

芦川いづみの尼さん姿は確かに美しいが、黒髪のほうがやっぱりいい。小林旭が YouTube で「可愛かったよ、キューピーのお化けみたいな感じで」と話しているのが言い得て妙。当時の日活の主演級の女優の中でこういう役ができるのは彼女しかいなかった(さすがに看板女優たちにはこの役はさせられないだろう)という点で、芦川いづみは当時の日活にはなくてはならない存在だったのだろう。

芦川いづみ全制覇を目指すぞ!
akrutm

akrutm