赤いジャケット

愛より強くの赤いジャケットのレビュー・感想・評価

愛より強く(2004年製作の映画)
5.0
ドイツの人口はおよそ8000万人
その内、トルコ系移民は300万人、人口比率で4%だそうです
何故、トルコ人はドイツへと移民したのでしょうか
また、ドイツは何故、トルコ人を受け入れたのでしょうか
前者をより良い所得のためとするなら、後者はより安い労働力を求めてという所でしょうか
ドイツとトルコの関係の前提にあるのが経済、つまり金銭のやり取りだとしたら、互いの文化を理解しようとする気持ちは二の次です
これでは衝突は避けられませんよね
だからこそこの様な映画を撮ったのかも知れない、また望まれていたのかも知れない
ドイツで暮らすトルコ系移民を描いたファティ・アキンの映画【愛より強く】を観ました
男が登場する、若くは無い、酒浸りだ
「ノドが渇いたなら水を飲め」
耳に痛い言葉かも知れない
浴びる様に呑み、車を運転し、壁にぶつかる
映画【愛より強く】の原題はドイツ語で【Gegen die Wand】、直訳すると【壁に向かって】だそうです
男は病院で精神科医に諭される、聞く耳を持たない
診察室を出た男に若い女が質問する
「アナタはトルコ人?」
男が答えるのを待たずに女は続ける
「私と結婚して」
男は返す
「ふざけるな」
思いつきで結婚してしまう男と女、描かれる顛末やいかに
詩人の吉本隆明が言うには、物語というのは入口と出口があるそうです
語り手がその物語を語るきっかけとなる、入口の場面
入口から物語を語り、どこに行き着いたのか、出口の場面
物語の入口と出口を見極める事が批評の第一歩だそうです
映画【愛より強く】の背景であるトルコ人コミュニティーの問題は、語り手にとって身近であるから描いただけで、そこが入口では無いと思う
ならどこが入口なんでしょうか、またどこが出口なんでしょうか
こういった事を考えてしまうのは今作が、観客である自分に鋭く突き刺さる様な物語だったからだと思う
別れを受けとめなければいけないのに、受け入れる事が出来ない
どうにもならないから、またどうにかなるにも関わらず、どうにもしない
物語の前半は破滅へ向かって進む
物語は転調し、破滅から生まれた感情は出会った男女の内面を変えていた
考えがまとまらない
好きな映画です
言いかえれば、主人公の間違いに対して「わかる」と共感してしまえる映画
観た時期が悪かったのか良かったのか