Habby中野

本日休診のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

本日休診(1952年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

休診日に訪れまくる迷惑な患者とその全てに対応するウルトラ親切な医者のドタバタ劇、その雑感の中にウロチョロするテーマを摑まえるとするとそれは患者と周囲の人間を描くことで問われる「幸せ」の如何だろう。患者を見れば必ずその周囲の人間が映るが、そこに強調されるのは必ずと言っていいほどの「貧乏」。その貧乏と病は人を高度な幸せとはし得ないが、それは必ずしも不幸のどん底だとは限らない。
その一つの答えは、精神疾患の帰還兵をもはや病気として扱わず兵隊の真似事に付き合う周囲の人々が、家族の元へ帰った元患者(?)の雁を彼と共に見送るラストシーンに表れている。病や貧乏の中でも周囲の人々との幸せを感じられる人間、或いはその周囲の人々の幸せを、人格者の医者や「金」に負けて賭博に陥る者を馬鹿者らしく描くことを通して語っているのだと思う。他にも嫌味のない大金持ちを対比させたり謎のベビーブームが起きたりと、一見軽いコメディだが、100分間の「医者」と「患者」がかくも意味を持ったところに、痒いところを他人に掻かれたような不安な快感を経験した。
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