朝…登校する子供たちが事故に遭わないように信号のところで横断中の旗を振る…いわゆる「旗振り」
外国人が見て驚く日本の朝の風景らしいです。
「おはようございます」
赤ちゃんを背負った若いお母さんが明るくあいさつしてくれる。あいさつを返し、気になってたことを聞いてみる。
「この信号で旗振りしてたカサイのおじいちゃん…最近見ないですね？」
「あのおじいちゃん…亡くなりましたよ」
「え？」
「ストレイト・ストーリー」
すっかり歳食ってケンカして10年も疎遠になってしまった兄弟…倒れたらしいと聞いてじいちゃん弟がじいちゃん兄を訪ねていく話。
驚くのはこの時代にその方法がトラクター(カスタム)で何日もかけてノロノロ行く…その道々で色んな人と出会うロードムービーなのです。実話！
驚くのはこれを監督したのがあのデヴィッド・リンチ！難解でシュールで不気味な映画ばかり撮ってるこの監督が？
さらに驚いたのは主演のリチャード・ファーンズワースの遺作になってしまったこと…病気が理由とはいえやりきれない別れでした…
「ストレイト」には色んな意味があるね～、じいさんの名前…まっすぐな道…まっすぐな気持ち…いい映画だった…
これはカサイのじいちゃんの言葉…
カサイのじいちゃんは町内会の集まりで知り合った人でひょんなことから映画話で盛り上がり、おれの最年長の映画友達になった。おれの父より歳上だったが映画の趣味はおれより若かった…確か1990年のベストワンが「羊たちの沈黙」でおれと同じだったことから意気投合したんだ。
女優話で盛り上がり誰が一番好きかって話になり、おれは少しじじいに気を使って古いところから…
「秋吉久美子」って言ったら…
じじい…原節子か吉永小百合とかいうかと思いきや…何十年も船に乗ってる老漁師のように目を細めて…
「スカーレット・ヨハンソン」
って言いやがった😁💦
去年くらいまでこの信号で旗振りしてたのに最近見ないな…と思ってたんだ💦
「亡くなりましたよ」
カサイのじいちゃんはノロノロトラクター(カスタム)に乗って「ほんじゃあね～」と片手を挙げて…まっすぐな道をまっすぐにゆっくりと行っちまったみたいだ…
