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青べか物語のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

青べか物語(1962年製作の映画)
3.9
人々の営みの瞬間瞬間を生き生きと描いた群像劇

何回か名画座でかかりながら観ていなかった本作。浦粕(というかホントは浦安)のある種デフォルメされた、でもきっとこんな街だったのだろうな〜と思わせる、漁師町時代の面影たっぷりの映画でした。ラストシーンで浦安橋をダンプカーがドヤドヤ通過していくさま、このあとあの貝のたくさん採れた干潟が埋め立てられて、営団地下鉄東西線が開通して、そのまた先には夢の国と京葉線ができるのか、と未来から来た観客としては、余韻がすごかったです。ある意味、浦安という街はラッキーですね。映画に残るのですから。

ストーリーは
山本周五郎の青べか物語の映画化でして、森繁久彌演じる、物書きの先生が、人生に刺激を与えるために、東京からほど近い浦粕の街で暮らす中で観察した人々の群像劇です。冒頭で先生は「青べか」を売りつけられたり、親に捨てられた子供たちにカツ丼を奢ったり、雑貨屋の息子は、新婚生活がうまく行かなくて結局妻に逃げられたり…

常に傍観者を心がける森繁先生も、そんな先生に惚れてしまう芸者の左幸子おせい、そして私が小説でも好きなエピソードである、蒸気船の中で暮らす老船長の左卜全、「青べか」を売りつけた東野英治郎…役者の魅力も余すことなく楽しめる作品でした。
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