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ヤンヤン 夏の想い出のあのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
字幕 石田泰子(石田泰子中国語もできるの!?!

京都みなみ会館 さよなら興行

(この作品は去年エドワード・ヤンにハマったときからずーっと観たくて いつかスクリーンで観られたらいいなっておもってたので 京都まで迷わず行きました
結果 現みなみの最後の上映で観られてよかったなーと)

まずもうエドワード・ヤンは最高
はぁもうちょうすき、この作品
どうしても牯嶺街と比べてしまうとこもあるんだけど 牯嶺街と比べられないというか
牯嶺街が鋭い光の作品ならば こちらは柔らかい光の映画というかんじ
冒頭の木の道のロングショットから あああエドワードヤンの映画や。。と泣きそうになった

長いし人物も多いし 一見ぐちゃぐちゃになりそうなところを 巧く繋いでみせるエドワード・ヤンの手腕に脱帽
前のシーンの会話や音ががっつり次のシーンに被っている演出とか

高級マンションに住む家族のお話だけど それぞれが別々の部屋を与えられていて=家族のお話、というより 個々の話という色合いを強めている 物理的にも
少年ヤンヤンは物事をフラットに達観して見ているところがあり それがこの映画のバランスを保っている気がした

父NJ、姉ティンティン、ヤンヤンと 中心になる軸は恋愛なんだけど
もうね、この父が自分の恋愛を語るときに娘の現状とオーバーラップするの!!!!いやもう説明できないので ちょっともう観てとしか言いようがないんだけど ほんっっとに素晴らしいのこの演出が

わたしはティンティンのパートがすごいいいな〜とおもったんだけど
なんかこう恋愛初期のワクワクと気まずいかんじの混ざったような もうエドワードヤンにこういう微妙な年齢の少年少女撮らせたら完璧で
ティンティンの衣装がすべて完璧なんだよね
台湾の制服を微妙にまくって七分くらいにして着ているかんじとかめちゃくちゃかわいい
あと白のワンピースとか みずいろのシャツに白のスカートとか
何着ていこうかなって鏡で合わせるかんじとか クラシックのコンサート聴いてても 心ここにあらずな感じとか ほんとこういう描写を省かないのがエドワードヤンのいいところなんだよなぁとしみじみ
コンサートのシーンとかわりと長めで絶対に編集でもっと切れるけど ああいうのをきっちり入れてくるからこその3時間なんだろうな
特別な台詞とか そういうのだけじゃなくて台詞なしで人と人との繋がりとか その不安定さを見せてくれる
こういうのが人生なんだろうなとおもうし
(だって日常にそんなキメキメの台詞なんて出てこないし)

でティンティンの彼氏が 『映画は人生を3倍にする』って言うんですよね
(これを主人公級のひとに言わせないのも良い!良いぞ!)
これはエドワードヤン自身の言葉なんだろうなっておもった
あまり彼の作品でここまで説明的な台詞が出てくるのないんだけど 遺作で意図的に入れたんだろうなとおもった
しかもこの会話のやり取りが伏線になってるのも いい
あとあの信号機のキスシーン すきすきだいすき はぁぁぁあ最高!エドワードヤン一生ついていきたいいい!!!!
「僕の心にいるのは君だけだ」→青→キス→黄→赤 ってこれふたりの今後も暗示してるんだとおもうけど
暗闇で車がザーッと通って行く音の中で信号の色と引きまくりの画と
キスシーンだからってアップで撮らなくてもいいんですよね BGMもいらない
もうたまらないわ 最高すぎる。。。

それと対比するかのように暗闇の道を一人で帰るティンティンの切ないこと。。。!

NJの熱海パートもすごくよかったよ
異国の地で 距離が縮まりそうで縮まらない

ドアとかエレベーターの扉とか 人と人を遮断・出会わせるものとして使うエドワードヤンお得意の演出たくさんあったけど
ホテルのこのふたりのやりとりがいちばんグッときたな、、
ホテルで小田と契約したよって電話を受ける様子が 部屋の鏡越しに撮ってて
エドワードヤンってこう対話してるひとを絶対直接映さないの それがすきなの
なんかへんに冷めて見てる部分もあるんだとおもう 監督自身が
でそのあとNJが部屋に行って(これドアのところ、というのがいいのよ 入らないで)
わたしが愛したのは君だけだ→閉じる とかさ そのあと泣いてるガラスに東京タワー写ってるのとかもう最高だよ、、なんなのこれ NJよ勢いで言うんじゃないよ なんでいまなんだよ
タバコふかしてブルーの影になってるのとか 波がザパーンとなるのとかちょっともうエドワードヤンどうかしてる(褒めてる)

ままならない人生の断片を 複数の人物を通して切り取り出していく
最後のヤンヤンの言葉がこの映画の、エドワードヤンの考え方のすべてな気がしました
人物をどん底へ突き落とすエドワードヤンだけど それがすきなんだけど
この作品はほかに比べていちばん優しさにあふれてる気がした
だいすき 最高 もういっかい観たい
あ