トンボのメガネ

平成狸合戦ぽんぽこのトンボのメガネのネタバレレビュー・内容・結末

平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

金ローで録画していたものを漸く鑑賞。
ジブリ作品の中では地味な印象だった為、テレビで放送していても、いつもちゃんと見ていなかった。
しかし今回は途中から涙腺が崩壊し、ラストには号泣していた。

子供の頃は、この作品に描かれている意味がほとんど分からず、狸の作画が苦手で毛嫌いをしていた。今も作画はそんなに好きではないが、ストーリーは胸を貫くものがあった。

多摩ニュータウンの開発がいかに無駄な建設だったのかが身にしみて分かる今だからこそ、人間がしてきた残酷な行為に悔し涙が溢れ… いつしか、自分達の身をも切り刻んでいたことに気付き始め、狸に自分達を投影し、情けなさにまた涙が溢れる。

狸達が自分達の郷を化学で蘇らせるシーンで、思わず郷に駆け出す人々の姿を目にし、後悔で胸がエグられた。
その時、高畑勲の熱いメッセージを正面からキャッチしていることに気づく。

行き場を失った狸が人間に化け、人間社会に紛れて生活を送りながら、こんな生活を人間はよく耐えられるな…と驚愕する。
強烈な皮肉だが、核心をついている。

人間はこの地球で何がしたいんだろう?
どこに向かっているんだろう?
破滅しか見えてこない愚かな未来に、軌道修正は可能なのだろうか?
自然を破壊しつくし、全てが滅び長い年月をかけてリセットするしかないのか?

人間の作り出した文明と自然が共存する道は残されていないのか?
まずは愚かな歩みを一度止め、冷静に考える必要があるのではないか??
ですよね?高畑さん。

この映画が公開されて25年もの月日が流れ、この後に及んでも未だ改善が見られない環境問題。
高畑勲のバトンを受けたからには、次へ繋げる努力をしなくては… 何ができるかなぁ…


この感想を書いたのはコロナの前だった。
コロナで世界が止まった時に、破壊の渦も失速したように感じた。コロナ後の世界にはこの時より希望が持てる世界に変わっているような気もしなくない。