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カラー・オブ・ハートのSPNminacoのレビュー・感想・評価

カラー・オブ・ハート(1998年製作の映画)
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TVドラマ「プレザントヴィル」の街はヘイズ・コードの行き届いた平和で安全な楽園、同時に退屈で不自然で薄気味悪い悪夢。物語の中から登場人物が現実に出てくるのはあるけど、現実から物語の中へ入っていく双子兄妹。2人は天地創造するように、或いは無垢な世界を堕落させるように、禁断の果実を配り、予め決まった物語世界に変化をもたらすアダムとイヴの役目。若者から大人へ、女の子から男の子へ、身体から知識へ、本や芸術、愛と自由、喜びと悲しみ…モノクロが徐々に色付いていく過程がとても瑞々しく映画らしい。1950年代後半設定の撮影が完璧だからこそ、パートカラーが映える。そして、(白人だけの)保守的なアメリカを若者やマイノリティ文化が揺るがし始めた時代を反映させてるのも良い。正にRock It!だが、固定された価値観=夫たちだけが取り残されて慌てふためく。彼らにとってはホラーで悲劇(轟く雷鳴とウィリアム・H・メイシーの大きな目玉を捉えたショット!)、そういう人々のすることは現実でも今だに同じ。やがて架空の街はどんどん現実社会への風刺が増していく。
現代っ子リース&ナードなトビー、ジョアン・アレン、今は亡きJTウォルシュとポール・ウォーカーらキャストもみんな最高。中でも、ルーティンに疑問を持ち始め戸惑うジェフ・ダニエルズが素晴らしく、刺激を求め自由に憧れるのが芸術家なのだと映画は語る。夢と現実を見事に重ね合わせた傑作だった。この結末が絵に描いたような理想だとしても。
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