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他人の顔のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
4.8
顔を失った男のアイデンティティの再形成とその意味

草月流お花を習っていた先輩から「勅使河原宏の映画ぐらい観なさいよ」と言われたものの全然観る機会なし。と今回初めて観ることができました。

あらすじ:事故で顔を失った男(仲代達矢)は精神科医の(平幹二朗)の元、新たな「顔」を手に入れる。新たな顔得た男は妻(京マチ子)を誘惑して手に入れるが...

こちらは大満足。濃いストーリー、濃い映像、濃い音楽でした。

映像からいえば、怪しげな精神科に、ディスプレイされている体のパーツがシュールでありながら整然とした美しさがあって存在感アリ。音楽も武満徹作曲で優雅でありながら現代の混沌を孕む音でした。

俳優陣も存在感アリ。(というか、ゴメスの名はゴメスと被りすぎなのですが)精神科医の平幹二朗はともかく看護婦の岸田今日子が怪しげな白衣の悪魔っぽく見えて。あの病院はあんまり行きたくないなあ。特に歯医者だったら無理(笑)

顔を失ったことで自信をなくし、また新たな顔を得たことで自我のコントロールを失った仲代達矢の迫力。序盤は包帯ぐるぐるで登場ですが声だけでの演技は素晴らしかったなあ。妻京マチ子も濃かったし。(突然の裸登場にびっくりしましたが...)
また不倫を持ちかけられるシーンの脚の美しいこと、エロいこと。男と女の駆け引きに脚は重要ですね。

最初に包帯ぐるぐる男と新たな顔を手に入れた男が同一人物だと見抜いた少女は市原悦子。不気味なほど純粋な少女でこれまたストーリー内のアクセント。

途中、原爆の影響のケロイドのある少女のエピソードが挿入され「見た目とアイデンティティ」に付いての考察がより深まるというのでしょうか、文字通り「顔」ってなんだろうと考えてしまいます。

「自由なのは孤独なのだ」という言葉を医師はいいますが、正に共感。
見た目問題しかり、現代でも引き続き議論される話題ですね。

ロケ地に新宿も渋谷も出てきたし(京王百貨店も西村パーラーも発見!)
見どころたくさん過ぎてレビュー書ききれません...

レビューは満点以上をつけるべきなのですが、この日は朝から別件をこなしたあとに観たので実は一瞬寝そうになったので自戒の減点です。仲代さんの声いいんだもん。
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