イルーナ

アダムス・ファミリー2のイルーナのレビュー・感想・評価

アダムス・ファミリー2(1993年製作の映画)
3.9
先週に引き続き、ティム・バートン版のドラマの予習のつもりで観てみました。

前回に比べて、やたら生々しさが強調されてましたね……
まさかの開幕「セックスしたから」発言。地上波ゴールデンタイムだったからビビりました。
お化け一家に新たな命が生まれ祝賀ムードの中、やきもちを焼きまくるウェンズデーとパグズリー。そういうことあるあるですよね。
やって来たベビーシッターがガチのサイコパス殺人鬼で、それに引っかかるフェスターはお気の毒様。
重度のコミュ障なのを乗り越えて結婚できたと思ったらこれだもんなぁ。前作といい苦労人だ……

そんな本作の白眉はやはりサマーキャンプの描写でしょう。
デビーの奸計により子供たちが送られたキャンプはまさに絵に描いたような地獄。
そこにいるのはほとんどが金髪で上流階級出身の白人の子供で、どいつもこいつも自分の出自や能力を鼻にかけるような奴しかいない。
(アダムス家は資産家だからキャンプ代なんかポンと払えるのにな……まさに能ある鷹は爪を隠す)
で、アジア人やインド人、障碍者といった子供は露骨に被差別階級。
周囲はお化け一家のウェンズデーとパグズリーをこのヒエラルキーに押し込めようとするが、もちろん屈することはない。
で、そんな彼らを矯正すべく「みんなと仲良くしましょう」の価値観を押しつけ、反省小屋ではディズニー映画や往年のミュージカル映画を延々と観させる……
マジョリティや陽キャの暗黒面をグロテスクさすら感じるレベルで生々しく描きまくっています。
これ、絶対キャンプで嫌な思いをしたスタッフが大勢いたに違いない。
「お化け一家呼ばわりされるアダムス家より、あいつらの方がよっぽど怖いぞ!」という具合に。
また、ウェンズデーと仲良くなったジョエルは監督自身がモデルだそうで。重度のアレルギー持ちって苦労されてきたんだなぁ……

そんなキャンプの大詰めは学芸会。
その題材が「感謝祭の起源」というのがもう露骨。入植してきた白人にとっては記念すべき日でも、彼らを助けた先住民側からしたら受難の始まり。
当然弱い立場の子は先住民だけならまだしも、七面鳥やトウモロコシの役までさせられてたりする。
その脚本も先住民側を非文明的と見下し、七面鳥やトウモロコシ役は「おいしく食べてください」と歌い上げる醜悪な内容……と思いきや。
ウェンズデーが見事に改変してくれていました!そこから始まるはみ出し者たちの大逆襲は痛快そのもの。
前作の学芸会も大笑いさせられましたが、こちらはよくやった!という感じ。
こりゃあ、ますますバートンとテーマがマッチしてますわ。
(とはいえ、ジョニデとの黄金コンビかつ本作と似たようなテーマでありながら、とんでもない核地雷だった『ダーク・シャドウ』の件があるので油断できないですが……)
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