イチロヲ

姦婦の生き埋葬のイチロヲのレビュー・感想・評価

姦婦の生き埋葬(1962年製作の映画)
3.5
生きたまま埋葬される恐怖に苛まれている男が、献身的な妻に支えられながら、強硬症(統合失調症の一種)の克服を目指していく。エドガー・アラン・ポー著「早すぎた埋葬」をアレンジしている、古典ミステリー。

この手のミステリー作品に触れていると、容易に犯人の見当をつけることが可能(すでにDVDのジャケットがアレ)。どちらかというと、犯人捜しは二の次であり、精神的に追い込まれた主人公の行く末を追っていくタイプの作品といえる。

誇大妄想と被害妄想の波状攻撃が容赦なく描写されるため、ひたすら居た堪れない気持ちにさせられる。幻覚、幻聴の描写は言わずもがな。"生き埋めにされない死に方"を模索する主人公が、変なベクトルから終活を始めるシーンが白眉となっている。

クライマックスに入ると、頭がイッちゃった主人公のリベンジ劇が展開。善悪が混交したカオス状態の中で、やるせなさマックスのドタバタが繰り広げられる。各カットがゴシック絵画のように美麗であり、もはや退廃芸術の領域と言っても過言ではない。
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