Takaomi

仄暗い水の底からのTakaomiのレビュー・感想・評価

仄暗い水の底から(2001年製作の映画)
4.0
小学生の時にみて、トラウマになっていましたが試しにもう一度だけ見ようということで観てみました。
ジャパニーズホラーでこんなにも感動したのは初めて。
感動といっても水の底にいるようなひとりぼっちで孤独な気持ち。
見つけてほしくても見つけてもらえない取り残された、娘や母親の心の叫びを巧妙に具現化できている素晴らしい作品でもありました。

まず脚本が本当に良くできている。母親と子のそれぞれが持っている葛藤や孤立感を母親のトラウマを通して伝えていく。
自身が幼少期にいつまでたっても母親が迎えに来てくれない、子供ながらに痛いほど覚えている孤独感を自分の娘にも繰り返してしまう。
そのことへの絶望感と罪悪感でヒステリックな焦燥感が増して子を想うあまりに過敏になっていきどんどんと壊れていく黒木瞳の演技は本当に圧巻でした。

娘もまさにそういう環境になれていて、ただこの子は母親の叔美とは違って好奇心旺盛でまるで待たされていることにも動じない子でもあったと思う。「ママ、郁子は大丈夫だよ」という言葉や態度がなおさら母親の気持ちを掻きたて私のせいだと言う不安を煽る。
屋上に勝手にのぼり母親に異常に怒られたり、見えない女の子と会話をしているシーンなんかまさにそうだと思う。

行方不明になっていた美津子も郁子と同じような子供であったのかなと思う。だからこそこの親子に見つけてほしかったのかもしれない。
水を通して繋がっていくストーリー。なぜ水だったのかというのはラストでわかるが、それよりも水は子供の流す涙だったのではないかとも思う。

自分が何者なのかわからない暗い暗い水の底で、ただひたすらさまよい続けるというのはどれだけ辛く寂しく悲しかっただろう。
それが母親の中で美津子という存在が自分にリンクし、この子を守ってあげたいと思えた瞬間だったのかもしれない。
それでも果たして自分の娘を置いていけるのかの疑問は残るが、そこはトラウマの解消であり、エゴとしてのトラウマの始まりでもあると思う。

そしてラストのエレベーターから水があふれるメタファーの意味が分かったときは、腰が抜けそうになった。
まさにあれは出産を表現していて、子を産み新しい命を育むということがどれだけ素晴らしく神秘的であるのか、だからこそどんな形であっても命を無駄にしてはならない。

親のためにも、自分のためにも、そしてこれから生まれてくるかもしれない新しい命のためにも。

だがこれだけは間違いなく言える。母親がいないと決して生きていけない子供、母親にとっての娘、娘にとっての母親が存在していること
誰にとってもどれだけ尊くて愛おしいことなのだろうと。

じっとりとひんやりした夏向けのジャパニーズホラーでもあり、母と娘の交流を描いたヒューマンストーリーでした。
でもやっぱり怖いです、、、、一人では絶対に見れない!!!
Takaomi

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