フライ

13Fのフライのレビュー・感想・評価

13F(1999年製作の映画)
3.8
仮想現実と現実に翻弄されるサスペンス色の強いSF映画だが、サスペンスとしては致命的な先読みし易いストーリーでありながらも、ラストへのシュールさと哀愁まで感じさせてくれる展開は、中々の秀作。

ビルの13Fにある会社で、仮想空間で1937年のロサンゼルスを創り共同研究開発しているフラーとダグラス。フラーは、ダグラスに内緒で、危険を伴うにも関わらず、仮想空間にいる自分そっくりな個体に入り世界を楽しんでいたのだが、衝撃的な事実に気づく。ダグラスにその事実を伝えようとするも、1999年の現実でフラーは、何者かに殺される。警察に呼び出されフラーの死を知らされるダグラスは、突然現れたフラーの娘と言う女性との出会いや、色々な点が腑に落ちず、自分もリスクを顧みず1937年の仮想現実へと向かうのだが。

冒頭シーンが少しネタバレになっているだけに、先が読め過ぎて残念だが、それでもかなり面白いのは、実際起こりそうな世界観と、辻褄の会う無理の無い設定の面白さに尽きる。そして13と言う不吉な数字が、色々な負を呼び込む様な展開がシュールで面白い。
仮想空間で一番最初に頭に浮かぶマトリックスみたいに、ド派手なアクションや展開は無いが、それなりに練られた設定はスリリングで面白いし、終盤から展開されるロマンスにシュールさと哀愁を感じさせてくれるのが魅力。更に、初老なのに色ボケしたフラーも憎めないが、ラスト黒人刑事の切ない言葉が胸にささり、悲哀を覚えるのが何とも言えないやるせなさを感じさせてくれるのが好きな作品。

マトリックスと同年に製作され、同じ仮想空間を扱うストーリーなのに、余り注目されなかった作品だが、全くジャンルの違う面白さのある作品で、今見ても充分楽しめる映画。寧ろ当時マトリックスに囚われすぎていて、今の方が変な先入観も無く見れたので楽しめた気もした。
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