山岡

子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつるの山岡のレビュー・感想・評価

4.2
原作で小島剛夕のペンにより描かれたシュッとした感じの拝一刀と若山富三郎のふっくらとしたルックスのギャップもあって今まで映画版をスルーしてきたのだが…この度、クライテリオンのブルーレイBOXセットをamazon で安く購入できたので、全6作をの感想をぼちぼちアップしていこうと思う…。

シリーズの一作目である本作は、拝親子が柳生烈堂に計られ江戸を追われることになる物語の発端の部分と、湯治場でのやくざ者たちとのイザコザ、その二つの話を一刀による回想を交えながら交互に見せていく展開で、とてもスマートな語り口だと感じた。

そして何より三隅研次によるエッジーな演出。光と影、ノイズと無音のコントラストや鮮やかな血しぶきなどなど…原作には無いモダンな印象を作品に与えている。今回、クライテリオンのブルーレイで鑑賞したことで、それらの演出をダイレクトに味わう事ができた。

そして観る前は原作の印象を潰しかねないと不安だった若山富三郎だが、実際に観てみると…超絶かっこよかった…。寡黙ながらもパッションが身体中から溢れ出ているような若山のキャラクター像は、原作の拝一刀にはない人間らしさ、父らしい人情味が加わっていて物語にさらなる深みをもたらしている。

大五郎を演じる子役の富川明宏も最高。まるで是枝裕和作品のようにナチュラルな、実に子供らしい姿をそのままフィルムに収めており、正直、無表情で内面が読みとりづらい原作の大五郎とはかけ離れたキャラクターなのだが、ドラマの情感を全く無視したやんちゃな動きを見せてくれて、血生臭い本作において一服の清涼剤としての役割を果たしている。特に温泉で一刀と娼婦が大事の話をしてるシーンでの暴れっぷりが凄かった。

その他、武器が仕込まれた乳母車だったり、果し合いの場で大五郎を利用する卑怯な手で相手を斬ったり、やくざ者の前で何故か無理やりセックスさせられたり…小池一夫原作らしいギミックもふんだんに盛り込まれており、本当に最高。2作目も楽しみ。
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