黒川

ロボコップの黒川のレビュー・感想・評価

ロボコップ(1987年製作の映画)
4.4
吹き替えをながら見。
これ僕の生涯No.1ってくらい好きな映画で、暴力こそ至高みたいな思考を植え付けてきたやつです。ある意味僕のルーツ的作品。あとこれでネクロフォビアとネクロフィリアの両方を発症した感ある。あとタナトフィリアも。

「デトロイト」で大分心が荒んだので中和しようとしたら大失敗した。化学反応起こして死にかけた。あんなんなのにこれめっちゃ社会派やんけ。当時のホテル事件知ってる人達にとってこれ全くエンタメになんねえ。

2010年のデトロイトが舞台。荒廃し汚職にまみれた警察はオムニ社と提携し傘下の組織となっていた。新任のアレックス・マーフィーは、赴任してきたその日にバディのアン・ルイスと共に早速悪党のアジトへと向かう。

多分初めて観たのは5歳くらいの時だったと思う。テレビ放映されているものを観たのが最初だった。当時、僕の曽祖父が亡くなったばかりだった。可愛がってくれた彼が棺桶に入っている姿を今でも覚えている。衝撃的だった。そしてそれが初めてのきちんと覚えている死との遭遇だった。
実は青い目の人が苦手だ。それはピーター・ウェラーの美しい瞳のせいだ。襲撃を受け搬送されるマーフィー。彼の生気を失い瞳孔の広がった瞳が画面に大写しになる。子供心に「彼は死ぬのだ」と思いながら観ていた(ただし子供だったのでマーフィー=ロボコップやんけと思っていたので、大人になって観るまでみんなロボコップの正体を知っていると思っていた。サラとアンのお人形問題みたいだな)。また彼を撮る角度が僕が棺に入った曽祖父を見た角度と同じだったのが更に死を実感させた。

子供の頃はヒーローものとして大好きな作品だった。カッコいいメカが悪を討伐する。親が映画に興味のない人だったので、たまにテレビ放映されるものを適当に観ていた少年の感想はそんなものだった。大学に入学しひょんなことから映画鑑賞にハマり、大人として借りてきたDVDを観た時、本作の素晴らしさに気づいた。これはキリストの復活の物語をなぞっているのだ。警官という公務員(作中ではオムニ社傘下だが)=パブリック、公共の存在が、自我を取り戻し個人=プライベートの存在となり復讐に燃える。オムニ社の社運をかけた一大プロジェクト「荒廃した街を24時間守る休みのいらない強い警官」が救世主であることを拒否した瞬間、彼は石に打たれ街を追放されるのだ。鞭打たれ、水の上を歩き、蘇生し、また人々を救済しに戻ってくる。いや、彼は己を救済するのだ。そして死でもって裏切り者は償わされた。

そんなわけで大好きな作品なのですが、「デトロイト」観てるとこんな映画作りたくなったわけがよくわかった。治安が悪く常に何かが壊される。警官は腐敗し街を支配する大きな会社が更にデルタシティ構想などという、人の上下を分けるようなことをしている。ある意味で本作は「メトロポリス」にも通じている作品だったのだ。黒人白人黄色人種の別はなく、街は壊され警官も時に役に立たない。悪党には平気で殺されるし、悪いことにそいつらはその大企業に飼われている。まるで近未来に到来したさらに悪いことになった「デトロイト」だった。当時のように黒人だけが殺されるのではなく等しく命を失うかもしれない。その救世主となるべく犠牲に捧げられた男の復讐劇。とにかくカッコよくて美しい(本当か)。
黒川

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