はくあ

ソナチネのはくあのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.8
抗争のために沖縄に送り込まれたヤクザたちが意図せず満喫するバカンスとその終わり。

日常が暴力に塗りつぶされるシーンが随所にあり、というかそれの連続でできている映画のような気もするんだけど、その切り替わりの速さが魅力的だった。
クラブでの息の詰まるような会話からトイレでいきなり高橋を殴るシーンなど、緩急のつけ方が鋭い。他には、会話(恫喝? )1ラリーもせずにいきなり腹を刺すシーンとか、スナックでの棒立ちでの銃撃戦とか。

ヤクザたちはみな暴力と死を受け入れているように見える。
後の「弱いから撃つ」「あんまり死ぬのを怖がると死にたくなる」というたけしのセリフを踏まえると、それはあくまで処世術なのかもしれないけど。
雀荘の店主の命乞いのシーンはそれと対照的なようにも思う。あのシーンで繰り返される「やめてくださいよ」を見つめるヤクザたちの顔はとても怖い。

それに対して、沖縄に行ったあとの空気感は奇妙に弛緩している。抗争で仲間を失いながらも、青春の一コマのようなシーンがつづく。
とんとん相撲、ロケット花火戦争、落とし穴づくり、フリスビーでクレー射撃のまねごとなど。
特にたけしと女(国舞亜矢)の会話のシーンはよくて、おっぱいを出して見せるのは(劇中ではなく、監督としての)照れ隠しのような感じさえした。

そこに終わりを告げるようにやってくるのが南方英二演じる殺し屋で、釣り人に扮しながら無言でターゲットを仕留めていく。
嘘っぽくない殺し屋というか、アウトレイジで高橋克典がやってた殺し屋の逆だなと思った。カッコよくないほうがリアルに見えるというか。
沖縄ヤクザを3人殺すシーンや、寺島進を撃つシーンなどは正面からとらえる構図によってファンタジックでさえあった。エレベータでの銃撃シーンもすばらしい。

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映像としては、沖縄の風景がうつくしいのはもちろんのこと(特に隠れ家までの長い道! )、雀荘の店主を吊るすクレーンを延々撮っているところなど、いつまでも覚えていられるような画がたくさんあった。

俳優に関しても注目ポイントを列挙すると、
・若たけしのカッコよさ
・序盤の超怖い無表情から沖縄での笑顔まで堪能できる寺島進
・こちらも無表情がカッコいい大杉漣
・勝村政信とたけしの奇妙なバディ感
・ちょっとかわいい渡辺哲
などなど。

折に触れて思い返すことのありそうな映画だなと思った。
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