〝夫婦は楽しい、騙し合う必要があるから。〟騙し合う、とまではいかなくとも、言わなくていいこと、秘密を秘密にしたままにすることが夫婦の間にはあっていいと思うし、むしろそうあるべきなんだと改めて思った。すべてを話したところで生じるものなんてのは、嫉妬だったり疑いだったりどうしようもない気持ちで、どうにも救われないような、きっとどうにもならないものばかりだと思うから。たとえ夢の中の話だろうと、現実世界における話だろうと、知らないまま/知られないままでいた方が幸せ、だったりするんだ。ひとつを知り、その次を知りたくなり詮索しようとつい足を踏み入れてしまう、でも後戻りが出来なくなってしまうこともきっとある。知らないままでいた方が、よっぽど良かったりするなあ、って。だから（知りたい、という感情なんかの）無意識に湧いてくる欲求や抑えられない好奇心なんてのは、時にはこわいもんだなあ、とも思う。見て見ぬ振り、知ってしまっても知らない振りが出来ればいいのにね。これはフェイクなんだ、って思い込めたならどんだけ楽なんだろう。
普通の生活（いや実際は、医者だし豊かだし「幸せ」な生活を送っていて、普通以上だとは思うけど、彼にとっての普通の、日常の、という意味で）をしていた彼が、ある晩のある出来事をきっかけに、関わったひとたちの不幸を知る。そこからなんとなく感じさせる「死」の匂い（ビルがなんとなく手に取った新聞の一面に書かれてる〝lucky to be alive〟なんかも！）。夫婦とは？と考えていたところに静かにやってくる、このドキドキハラハラ感。うーん、面白いなあ。
