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運動靴と赤い金魚のdeenityのレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
4.0
職場の方に勧められて鑑賞しました。アカデミー賞外国映画賞にノミネートされたイラン映画。

あまりイランという国についての情報はないですが、冒頭のカット。ボロボロの靴を直す職人の手。それだけで貧しい環境を思わせてましたね。
物が溢れる現代日本社会。靴が壊れたら買えばいいって当たり前のように考えてしまいますが、一つの靴を履き潰しても尚修理して履き続けなければいけない貧しさ。違う国のことだから、と割り切ってはいけないテーマ性を感じます。

そんな中で妹の靴をなくしてしまい、代わりの靴も買えないアリとザーラは一足の靴を共有して学校に通う選択をします。
兄の運動靴を履いて喜ぶ姿も、やっぱり恥ずかしいと感じる姿もどこか微笑ましく、子どもの純粋さは万国共通なんだと思わされました。

そんな妹・ザーラも、自分の靴を履いた女の子を発見し、追いかけてみると自分よりも大変な家計なんだと目の当たりにして身を引く辺りとかはどこか大人びて感じますし、そんな妹のために優しさを振る舞う兄・アリの努力は心打たれるものがあります。

何よりやはりマラソンですよね。賞品に靴があるとわかり、大会に出る決断をするアリ。この賞品が3位だというのがまた絶妙に難しいんですよね。それでもアリの「絶対に3位になってみせる」と笑顔を見せるシーンは心掴まれましたね。
マラソンシーンは自然と応援してしまいますからね。妹が走ってるシーンがカットバックしてくる様が一緒に頑張ってるって感じがして、妹のために汗だくで走るアリに感動しました。

結果がどうなったかはネタバレになるので伏せますが、本作が持つ本当の幸せとは何なのか、というテーマはやはり豊かで便利な社会になった今だからこそ見つめ直すべきテーマなんでしょうね。お金では買えない心の豊かさがある。ラストシーン、あの後に描かれる感動をあえて描かない辺りが何とも言えない余韻を残して素敵でした。
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