3104

東京マダムと大阪夫人の3104のレビュー・感想・評価

東京マダムと大阪夫人(1953年製作の映画)
3.8
庭付き一戸建ての社宅が並ぶ東京郊外の「あひるが丘」。
隣同士の東京マダム(月丘夢路)と大阪夫人(水原真知子。夫が大阪から転勤してきたのでこの名前。これに対しての月丘の東京マダムというぐあい)が、何かにつけ張り合う様子を軸に、周囲の人間模様などがテンポよく描かれる良質なコメディ。

・・タイトル通りマダムと夫人は、例えば新しい家電の導入などで張り合うのだが、物語の“軸”は序盤で突然あひるが丘にやって来る、大阪夫人の弟の八郎である。高橋貞二演じるこの八郎の素直で率直な、それでいて朗らかなキャラクターがいい。決していうところのイケメンでもなくどこかクマのような外見だが、東京マダムの妹・康子と会社専務の娘・百々子の両方に想いを寄せられるのもむべなるかな、である。

マダム月丘の妹で、封建的な結婚を嫌い実家を飛び出してきた康子を演じるのは、これがデビュー作となる芦川いづみ。今回「芦川いづみ映画祭」の1本で観たからというわけでも、ましてや僕が彼女の可憐さにかなり参っている~劇場で売っていたブロマイド買っちゃった~からでもなく、客観的に観て劇中の彼女はかなり目立つ、眩しい存在であった。というのもデビュー作というのに彼女は実質ヒロイン的な扱いを受けている。まだセリフ回しも所作もぎこちなく(それもまた初々しくていい)出番も少なめだが、駆け出しの女優にそんな重責を担わせ、それでいて映画を壊すことなく彼女の魅力も際立たせることに成功したのは、川島監督の手腕のおかげなのかどうなのか。

彼女よりわずかに年長で映画のキャリアもわずかに長い、いわば“格上”の北原三枝が、彼女を引き立たせるポジションをしっかりかつ魅力的にこなしている。対照的なタイプの女性の配置が効果的。

物語は社宅内のみならず、会社の部分もきちんと描かれる。ここでの「アメリカへ社員派遣か?」という“騒動”が、きちんと物語全体を揺さぶる力にしているところがいい。マダムと夫人の夫役の三橋達也と大坂志郎もまたいい配置。そして社宅という小世界で顔を突き合わせ噂話を掻き回す、その他「夫人」たちの賑やかさが印象的。彼女達のうるさいおしゃべりにアヒルの画像をインサートする辺りは、監督のスマートな“毒”を垣間見た感じ。

16mmで鑑賞。
3104

3104