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天井桟敷の人々のgcpのレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
4.0
バケツに堕ちた純粋な哀しきピエロ
ペテン師のように饒舌な恋多き演劇人
2人が愛した女は、男たちの目線をふわりと交わしてゆき変わらない、振り回されない、己に自由な女だった。それが真理なのか?冒頭の鏡を見つめる見世物小屋のシーンがあとになって頭の中をぐるぐる巡る。
自尊心を軸に生きる悪党やバチストを信じ続ける母性の象徴かのような娘、富と名誉に溺れ足りないものは暴力的に奪う伯爵。そして流浪の男。登場人物全員が自分を構成する細胞のひとつのように生きている感覚に陥った。劇中、人生、人生と何度も繰り返される。そうか人生そのものがドラマで、小さな光が灯されては消えてまた灯されていくように幕が上がれば幕は閉じる。そうやって人生という喜劇はつづく。カーニバルという喧騒に飲み込まれても微笑み続ける真理を、バチストも皆掴めそうで掴めない。そして彼女こそ天井桟敷の人々。そんなドラマを観客として笑っている。長さを感じないとても良い映画だった!天才肌のバチストも嫉妬さえ糧にする努力型のフレデリックもとにかく魅力的。
あと貧しい人の希望について語られた時、ああやっぱり貧しさは豊かさだと改めて思った。でも何気に一番良かった台詞は、「夜遅くにすみません」という言葉に対しての「いいのよ、夜はいつも遅いから」という返事。いろいろハッとしてしまう、また家で見返したい。
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