みみみ

レクイエム・フォー・ドリームのみみみのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

毎日がキラキラしてました
そのキラキラは夢でした
あのキラキラは幻想でした

【あらすじ】
ドラッグにハマり、家のテレビなどの家具を質屋に入れた金でドラッグを買う生活をしていたハリー。ある夏、ハリーは毎日のように一緒にドラッグを楽しんでいたタイロンにドラッグを使った儲け話を持ちかけられ、乗ることにする。タイロンの持ち掛けた話は大当たりし、ハリーはガールフレンドのマリオンと自身達の夢であったお店を開くなど、充実した日々を送っていた。
一方、ハリーの母親であるサラはそんなハリーにほとほと呆れ、半ば息子を諦めるような日々を過ごしていた。そんな中、サラが毎日のように釘付けになっていたテレビ番組から突然のオファーの電話がかかってくる。サラはテレビ番組にお気に入りのドレスを着て出演するために、ダイエットを決意。しかし、自分の意思のみで急に食生活をガラリと変えることができるわけもなく、サラの友人の娘が大幅なダイエットに成功したときに食欲減退の薬を貰っていたという医者を紹介してもらい、薬の力を使ってダイエットに取り組むことにする。
そんな夏のある日、ハリーが久しぶりにサラの元を訪ねた際に、サラの様子に違和感を感じる。毎日のようにドラッグに浸かっていたハリーは、サラが医者から処方されていたものが覚醒剤だとすぐに勘付いた。しかし、当然ハリーは自分がドラッグ漬けの毎日を送っているからそんなことが分かる、なんてことは言えず、サラと別れていつも通りドラッグで気を紛らわすことしかできなかった。
ドラッグを自ら求める息子のハリー、知らず知らずのうちにドラッグの沼にハマっていく母親のサラ、そしてその周りの人々。彼ら、彼女らの行く末は果たして、、、

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とんでもない作品だった。
鑑賞後の第一声はこの一言に尽きる。
きちんと最後まで清々しいほどのバッドエンド、誰1人として救われない。(胸糞って聞いて見たけど、ミストを初めて見た時のバッドエンドの衝撃や、ファニーゲームを見た時に感じたような胸糞感は個人的にはなかった。)

ドラッグの危険性について子どもたちに注意喚起をする際は、警察が作ったチープな映像を見せるのではなく、イスに縛りつけてでもこの映画を見せた方が1億倍ぐらい効果があるんじゃないかってぐらい、ドラッグのほんの少しのキラキラした部分と、圧倒的な危険性を表現した映画だった。
キャストや舞台が日本じゃないから、まだ第三者みたいな視点で見れたけど、キャストも舞台も日本で、よりリアルに感じられるような作品だったら、闇金ウシジマくんなんて比にならないぐらいのエグさを感じそう。アメリカの人、どんな気持ちで本作を見るんだろう。

ハリーやタイロン、マリオンは自分たちで自らドラッグを求め、サラはインチキドクターのせいでドラッグにハマってしまうという入り口こそ違えど、ドラッグのパワーに魅了されて依存してしまい、その結果人生は壊れるという結末は同じという表現のされ方。ドラッグで壊れるのって自分の人生ってイメージがあったんだけど、本作を見て、ドラッグの危険性の1番大きなところは周囲との関係の崩壊なんじゃないかと思った。単にドラッグの依存性が強いというだけでなく、ドラッグ欲しさの行動やドラッグが切れた時の感情任せの言動が自分の周りから人を遠ざけ、その結果孤立する。孤立してしまったら、その寂しさや虚しさを満たすためにドラッグを求めるしかない。こうして負のループが完成してしまってるのかもなあ、なんて思いながら見ていた。

本作はドラッグのあらゆる側面の強烈さを描いていたけど、ちょっと拡大解釈したらゾッとする部分もあった。
と、言うのも、本作は常に追い求めるものがドラッグだったけど、これってドラッグがそのまま"夢"(その他、何かを強烈に追い求め、熱中すること)に置き換わっても同じようなことが起こるんじゃないかと思ってしまった。夢を追い、勢いに乗っている時は、そりゃ人生はイケイケで楽しいんだけど、勢いがなくなって失速した時に、今までの富や名声にしがみつこうとして、本作の登場人物のように人生が崩壊し、どんどん転落していくってこともあり得そうだよなあ。本作ではドラッグで描かれていたけど、夢もしかり、キラキラして見えるものは人を盲目にしがちだと思うので、本当に大事なものが何かを常々考えて生きていく必要があるよなあ。

と、内容はなかなかにエグい本作だったんだけど、カットや表現・演出の仕方はすごい好きな部分が多かった。
冒頭のサラがダイエットに挑戦し始めた時のグレープフルーツ、ゆで卵、コーヒーを食するシーンの、食事の動作は一切描かずに、食事の一音と共に食後の映像に切り替える表現は特に好き。あの見せ方、すごいチープになりそうな気がするのに、すごいオシャレに見えた。素直に見せ方の勉強になった。
あと、サラが冷蔵庫を見ながら葛藤しているカットの表現の仕方もすごい好き。画面の半分では冷蔵庫を見つめるサラを映し、もう半分では冷蔵庫を映す。1つの枠に見つめている人と視対象を映しているわけじゃないのに、見つめているということをきちんと映像として伝えられていたし、画面を2分割にすることで、それぞれにかなり寄ったカメラワークとなり、より一層気持ちの表現がされていたと思う。あそこもすごい好きだった。

結末含め、内容はエグかったけど、中身も表現も良かった作品だった。


あ、そういえば、冒頭にサラにかかって来た電話は本物だったんだろうか。
あの電話が本物だったならサラはちょっと気の毒だなあ。本来テレビ番組サイドがもっとこまめに連絡を取るべきなんだろうし、そうしていたらサラもあんな風にはなっていなかったんじゃないかと思う。
まあ、サラがテレビ局に行った時の局員の反応からしてきっと本物じゃなかったんだろうなあって気はしてしまうけど。
そうなると誰からの電話だったんだろう。単なるイタズラ電話?近所のおばちゃん友達の嫌がらせ?インチキドクターとグルの誰かの仕業?うーん、闇が深いですなあ。
みみみ

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