そのじつ

駅前旅館のそのじつのレビュー・感想・評価

駅前旅館(1958年製作の映画)
4.0
『女は男のふるさとヨ』から昭和喜劇映画に目覚めチョイス。
森繁久弥主演。
上野駅近にある旅館の番頭・治平(森繁)はこの道数十年のベテラン番頭。客引き・客あしらいならお手の物。けれど色っぽい姐さんには弱くて、旅館の主人にも「あれは女で失敗する」と言われている。

ところが世は団体旅行が大流行。客引きせずとも大手の旅行社とつながれば右から左へ大人数の団体が入ってくる。世間の風向きが変わってきたことを治平ら番頭たちも感じ始めていた・・。

天涯孤独の番頭稼業、旅館の重要なポジションを任されていながら、住み込みで働く肩身の狭さ。その部屋だって倉庫のような侘住まい。それでも番頭の礼装・角帯に羽織り姿になればキリッと粋ないい男になる。

調子ばっかりよくてダラシないところが目立つ男士の話かと思って見たが、男の矜持と哀愁を背負っていく姿に思いの外清々しい気持ちにさせてもらった。なにが粋って、野暮な言い訳やひとに縋るような事は一切言わない所。あんなに口が回る男が、己自身に関することは言葉少なで素っ気ない。そこがイカすのよね♡

森繁のオトナのリズムと、若きフランキー堺のハイテンポが交錯する華やかさに最後まで魅せられた。

路面電車の走る上野駅前の風景に驚いたり、昭和の風俗の懐かしさも楽しんだ。着物の着こなしが違うよなあ・・年嵩の女中さんがず〜っと着物のすそを端折っていて、腿くらいから襦袢見せて走り回っているのが面白かった。淡島千景や淡路恵子の着物や帯の柄が素敵・・。
ストリップバーの踊り子さんの衣装が茶摘み娘(スケスケ)なのも新鮮だった。

伴淳三郎と森繁の客引き対決シーン、フランキーの三味線ロカビリー、森繁を誘う淡島の色香ムンムンシーン、女将役・草笛光子のゴロツキ対決シーンなど見どころ満載。

市原悦子(女学生)と常田富士雄(たぶん刑事)の日本昔話コンビも出演。若すぎて最初分からなかった。
そのじつ

そのじつ