荒野の狼

ゴジラVSキングギドラの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ゴジラVSキングギドラ(1991年製作の映画)
3.0
1991年公開の103分の作品。前半は謎のUFOの飛来と乗組員の正体・目的などユニークな設定で引き込まれるが、中盤から脚本がいい加減で雑になり、ストーリーに関してはリアリティがまったくなく呆れたものになってしまった作品。展開が早いので飽きないが、見るべきものは、本作で久々に登場したキングギドラと、その改造版であるメカキングギドラのカッコよさ。後者に関しては、生体とロボットのハイブリッドではなく、メカゴジラのように完全なロボットバージョンが見たかった思いは残る。なお、本作ではキングギドラを「ゴジラ以上の脅威」というセリフはあるが、実際は、ゴジラより弱く、昔日の最強宇宙怪獣であったキングギドラの強さも怖さも見られない残念な扱いであった。
本作の設定では、遠い将来に核兵器は地上から廃絶され、日本が経済的に世界一になって、世界経済を支配するという未来の歴史が紹介されている。本作は中国の台頭以前に制作されたものであり、1990年初頭には日本経済が好調であったことが伺える未来の設定であったことがわかるが、現代の目からみると、このような未来像は陳腐となってしまった。この時代の日本人の経済観と日本の位置づけがわかる点では興味深い。なお、本作では、核廃棄物の違法投棄でゴジラが復活してしまうエピソードがあり、反核というオリジナルのゴジラ映画のメッセージは残してある。また、未来に原子力発電所をゴジラが襲撃したために日本全土が荒廃する未来像も語られているが、この辺を映像にしていれば、社会的なメッセージ性のより強い作品になったかもしれない。
主役の中川安奈と豊原功補は無難な演技。日本人以外では、当時の人気タレントであったチャック・ウィルソンやケント・ギルバートが出演しているが、彼らは俳優ではないため出演場面は浮いた印象が否めず、無名でもプロの俳優を使うべきであった。小林昭二、佐原健二、黒部進ら特撮ファンにはなじみの俳優が多数出演しているが、特に重要な役ではなく、視聴者からすれば、かえって集中力を割く効果になってしまっている。
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