荒野の狼

アフガンの荒野の狼のレビュー・感想・評価

アフガン(2005年製作の映画)
3.0
「アフガン」は2005年のアフガニスタン紛争の最終盤の1988年のイスラム武装勢力ムジャヒディンと対峙したソ連軍第345親衛独立空挺連隊(ロシア語版)第9中隊(英語題The 9th Companyはこれに由来)の兵士たちを、実話に基づき描いた140分の作品。映画の前半は戦地に派遣されるまでの厳しい訓練と、その中で育まれる兵士の友情が、後半は、アフガニスタンに派遣され、これらの兵士の悲劇的結末が描かれる。実話をもとに作られた話であるが、ソ連兵士には同情的な一方、アフガン側の兵士は不気味で死を恐れない暗殺集団やソ連兵を背後から狙撃する少年兵であり、本来、紛争の被害者であるアフガン市民への共感はゼロ。最後の戦いでソ連側で死亡した兵士は2人であるのに、本作では生存者の数は極端に少ないなど歴史的に正しくない部分はあるが、戦争に行ったソ連の兵士が若い命が無為に失われていくことを描くことで反戦のメッセージは大きい。
アフガン紛争に関しては、ノーベル賞受賞作家のアレクシェーヴィチによる「亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言」に、戦争の実態がドキュメントとして記載されているが、本作に描かれた厳しい訓練の記載はなく、むしろ、ほとんど訓練もされずに戦地に送られていった兵士の証言が複数ある。また、同書に記載のあるアフガンのソ連部隊内での凄惨な新兵の虐待・いじめや、地雷などでむごたらしく負傷・死亡していく兵士など、残酷・陰惨なシーンは本映画にはないが、これらが描かれているのが1991年のイタリア・ソ連の合作映画「レッド・ストーム/アフガン侵攻AFGHAN BREAKDOWN」。同作では、ソ連の最新兵器による攻撃でアフガンの一般市民が村ごと殲滅されるシーンがあるなど、戦争のリアリティはよく描かれている(映画としては、陰惨極まりない希望のない映画ではあるが)。
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