あぁ、僕は幸せだなぁ。
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アニエス・ヴァルダの色彩、カットへの熱量が感じ取れる。モーツァルトのクラリネットの曲も単調な暮らしの中に訪れる奇妙な幸福感をぴったり表しているよう。
衣装と壁紙とシーン切り替え時のベタ塗りも大胆なんだけど、物語性は崩れるどころか、よりメリハリがつく。これはフレンチのパワーなのかアニエスのセンスなのか。
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冒頭のピクニックでの紋切り型の幸せは、
直後のTVでのメロドラマによって即時に自己言及的に批判される。
幸せとは、誰かや何かを愛することで、
愛されることではないのかもしれない。
幸せに満ちた感覚が
物質の所有のそれと同じなら、
実はそんなに高尚なものでもないのかもしれない。
不倫とか浮気とか俗の題目で手垢にまみれる前に、
主人公の純粋な幸福感覚を
僕たちはどこまで自分のうちに
見出しているのか。
見出せているのか。
あんまり性的な偏見込みになってしまうけど、
あの時代に女性監督がここまで男性心理に迫っていることに驚いてしまう。頭が上がらない。
彼女の眼差しは、
鋭く容赦なく、それでいて愛情深く、
人々に注がれていたんだね。