うえびん

魚影の群れのうえびんのレビュー・感想・評価

魚影の群れ(1983年製作の映画)
3.7
海と共に生きる

1983年 相米慎二監督作品

年明け、豊洲市場の初競りで、238kgの青森県大間産のクロマグロが1億1424万円もの高値で競り落とされたそう。その金額の大きさにもびっくりしたけれど、競りの開始前に、売り手と買い手が、能登半島地震の犠牲者に黙禱を捧げられたのが印象的だった。

その青森県大間を舞台に、厳しい北の海で小型船を操りながら、孤独で苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男たちと、彼らを支える女たちの世界が描かれる。

一本釣りのシーンも、追いかけっこのシーンも、ラブシーンも、カメラの長回しが多いので、昭和のドキュメンタリー映像を見ているようだった。

出演者は、夏目雅子がきれいで、佐藤浩市が若くて、十朱幸代や三遊亭圓楽が懐かしかった。何より主人公の房次郎を演じる緒形拳の漁師役が堂に入っていて、それでドキュメンタリー感が増していた。

海と、船と、魚と、共に生きる人たちの昭和の一風景がリアルに感じられる貴重な作品。大間と同じように、日常に海のある暮らしを営まれてきた能登半島の方々が、一日でも早く元の暮らしを取り戻せることを祈ります。
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