うえびん

美しき冒険旅行のうえびんのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
4.3
野生の思考

1971年 イギリス作品
原題:Walkabout

オーストラリアの都市部
白人の14歳の少女と6歳の弟

父親に車で連れ出されブッシュへ
父親を失い残された姉弟はさまよい歩く

そこへ現れたアボリジニの少年...

都市文明と未開社会
人工社会と大自然
極端な対比が興味深い
大自然の描写が美しくリアル

自然の中の人間
そのあり方、生き方について
深く考えさせられる

アボリジニの少年は
16歳でイニシエーションの旅に出る
「Walkabout」

水の在り処を探り
野生動物を狩り
火を焚き
捕えた獲物を焼き
それを食べ
星の下で眠る

生物として
野生の人間の原点を見る

南半球の熱帯地帯
だから肌の色は黒くなる

1788年
イギリス人が
オーストラリア大陸へ入植を始める

土地を所有する概念がないアボリジニ

白人は彼らから土地を奪い
金鉱開発や羊毛生産の牧場で
労働力として酷使した

北半球のどこかの大陸でも
同じようなことが起きている

文化人類学者のレヴィ=ストロース

科学的な思考より根源にある
人類の普遍的な思考を
「野生の思考」と名付けた

近代科学のほうが
むしろ特殊なものだと考えた

科学的・論理的な「近代知」より大切な
人間にとって本源的な思考・創意工夫を
「ブリコラージュ」と名付けた

西欧の近代科学は
自然と文化をはっきりと分け
全てを計量的に組み上げて発展した

本作には

そういった思考と対局の
自然と文化が交わるところにある
人間の根源的な知

「野生の思考」や「ブリコラージュ」が
美しく、懐かしく、切なく
描かれている
うえびん

うえびん