こたつむり

黒く濁る村のこたつむりのレビュー・感想・評価

黒く濁る村(2010年製作の映画)
2.6
♪ 道なりに 道なりに
  その道を造った人なりの
  逆らってはいけない

「村の時間の時間がやってまいりました」
なんて言いたくなるほどに、ミステリと農村は相性抜群。閉塞された場所が生んだ因習は、悍ましき情念を掻き立て、グッチョンチョンでドロドロな争いに発展しやすいのです。

だから。
この邦題に期待するのも至極当然の話。

何しろ“黒く濁っている”わけで。
元は無色透明、もしくは限りなく白に近いのに、澱が溜まるに連れて、じわりじわりと黒ずんだ…なんてことを考えるだけで背徳感に打ち震えちゃうのです。ぐふ。

しかも、韓国製ですからね。
容赦ない外道を描かせたら天下一品のお国柄。
黒く濁ったように見えても、実は“蟲が無数に集まっていた”的な物語に仕上がっていると考えちゃったのです。

しかし、どんな映画でも期待値は低目が鉄則。
そのルールを忘れた僕の前に表れたのは、基本に忠実なサスペンスでした。お恥ずかしい話ですが、就学前から土曜ワイド劇場に慣れ親しんだ僕には“普通”過ぎたのです。

確かに黒く濁った欲望もありましたけどね。
底は浅く、足首が濡れる程度。
墨汁で色を付けたことがハッキリと分かる次第。

あと、特殊メイクで老人に化けていたのも微妙。毛が白くなったり、薄くなったりしても、眼だけは鈍い光を放っているのです。そう考えると他にも粗が見えてくるわけで…。うーん。残念。

ちなみに仕上げたのは『シルミド』のカン・ウソク監督。ギラギラした娯楽作を編むに長けてはいても、ドロドロの情念を描くのは苦手なのかも。それに、尺も160分と長すぎ。折角の“最後の反撃”も眠気には勝てませんでした。

まあ、そんなわけで。
韓国映画らしからぬ婉曲的な仕上がりの物語。
血飛沫やら肉汁やらが飛び散る系統を期待しなければ楽しめるかも。韓国では大ヒットしたそうですからね。でも、この程度の刺激だと韓国人には物足りない気が…(偏見)。


 
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