ninjiro

エイプリルの七面鳥のninjiroのレビュー・感想・評価

エイプリルの七面鳥(2003年製作の映画)
4.6
クスクス笑って、ハラハラ。
おまけに最後にホロリ、ってやつかな、と思いきや…。


玉葱の皮も満足に剥けずに包丁でそぎ落とすような、料理が苦手というレベルにすら達していないエイプリルは、恋人ボビーと二人で暮らすニューヨークに自分の家族を招いて七面鳥を焼いてご馳走を振る舞い、皆で感謝祭を祝いたい。
感謝祭当日、朝からボビーと二人して慣れない準備に取り掛かる。
しかしピアスにタトゥーの軽パンクスのエイプリルは、郊外で離れて暮らす家族からは鼻摘まみ者として扱われて久しい。

七面鳥の形をしたペアの塩胡椒入れをこの日の為に買ってきたボビーにエイプリル、
「これと同じのが家にもあったわ。母さんが"あんたより高価なのよ"って。1年でダメになったけどね。」
「なんで?」
「私が割ったから。」
「ヒュ〜♪」
「幾らした?」
「ん?…安くないよ」
「だから、幾ら?」
「………50セント」
「………フフッ、やっぱり安物だ…」

エイプリルの元へ車で向かう家族はパパ、ママ、お婆ちゃん、まだ思春期真っ只中の妹弟。
誰も厄介な長女、エイプリルの招待を歓迎していない。
どうせまともな飯にありつけるかどうかも怪しいとばかり、道中濃ゆいドーナツをたらふく頬張る始末。

この日の為に知識だけは備えていたエイプリルだが、やれば出来るんだからとばかり、大事な日なのにそれまで練習も何もしていない。
計画性もなにもあったもんじゃ無い。
きっとそういう所が身内にも疎まれる原因だぞ!
当然これ迄料理なんぞした事もないから今の今までオーブンは物置状態。
オーブンからごっそり荷物を取り出し、いざ着火!
……?
えーーーー?!!!


十数年前の初見から、何度見直したことか。
数ヶ月に一度のペースで観たくなる映画は、人生でも少ない。

ギルバート・グレイプの脚本家ピーター・ヘッジスの初監督作品。
主演のケイティ・ホームズは有名になってからも可愛いとか思ったこと無かったけど、ブレイク前の本作でもまあ微妙。でも、観進めるとどんどん愛おしくなってくる!
細かい芸の効いたエイプリルの家族一団は、誰一人をとっても曲者ばかり。ニューヨークに向かうまでの道程は、ボケとスカしとキレキレのツッコミと。
エイプリルの彼のボビーは…こんな素敵な男はなかなか居ない!普通の暮らしの中で出会い得る最高の男!
チェリー・レッド・レコードか4ADかってぐらいの静謐でありながらスカスカ、且つユルい雰囲気のサントラもこの作品の空気にはピッタリで、特にthe 6thsの「you you you you you」は、人生において繰り返し聴きたくなる曲の一つ。


七面鳥を焼くために、必死に近所を駆けずり回るエイプリル。
今までならきっと平気で放り出していた。
昨日までの人生と同じ様に。
でも、今日は絶対に諦めない。
今日だけは…。


最後はホロリどころではない。
涙腺は崩壊し、嗚咽が漏れて近所に心配される程。

お願いします。
皆んなでエイプリルを応援してあげて!
ninjiro

ninjiro