失われた10年と言われるバブル崩壊〜9.11同時多発テロまでの激動の時代を背景にした夫婦の性生活を綴ったヒューマン・ドラマ。作り手の涙腺を搾り取る演出がギリギリ臭い。
リリー・フランキーが『万引き家族』以上に良心的な夫カナオを好演。木村多江も時代に翻弄されこわれゆく妻翔子を熱演している。
橋口亮輔監督らしい即興演出が『渚のシンドバッド』『ハッシュ!』と比べて小ぢんまりとしてしまったのが惜しい。映画としての完成度は高いが、よく見ると粗も目立つ作品。
90年代的な気持ち悪さが凝縮された吐き気を覚えさせる映像が、橋口亮輔らしくゲチョゲチョ感に拍車をかける。寺島進と安藤玉恵が演じる素っ頓狂な夫婦(コメディリリーフ)は安定感ありさすがは大阪芸大らしいセンスだと思う。