ロックウェルアイズ

ファニーゲームのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
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夏の休暇を使って湖の辺りの別荘へやって来た一家。
暫くすると、若い男が家を訪ねてくる。
「卵を分けて欲しい」
それは、最悪のゲームの始まりだった。

ものすごく腹が立った。
映画の内容というより映画の作りに。
なんかあらすじ見るとすごい面白そうじゃん?
胸糞映画だと聞いていたから、どんな気分になれるかワクワクしていた(?)が、全く胸糞悪くない。怒りしか湧かない。
無機質で意味もなくただただ茶番。
こんな映画のどこがいいんだ?

と、最初は思っていた。
しかしある考察動画を見てから、この感情は正しく、同時にこの作品がかなり深いものだということを知った。
ハネケ監督作品は初めてだったのでかなり失望しかけたが、この作品の本質に触れて気づく。完全にしてやられたと。
ハネケやべぇ。

まずは観賞後すぐの感想。
珍しくかなり酷評してます。最初はね。

動機のないダラダラした犯人たち(寧ろそれでサイコパス感上がってるけど)が全く同情する気になれないぺなっぺな家族を殺していく様子を延々と見せられる。
ただただ退屈。
やってることはとんでもないはずなのにエグさを感じない。
殺人や拷問の描写、お母さんの脱ぐシーンなどを一切見せないという手抜き加減。
視覚的な衝撃はほとんどないが、かと言って心理描写も微妙だから想像して怖い系でもないし。

圧倒的敗因が家族団らん描写の少なさ。
ミストでも感じたことだけど、この家族(親子)尊いなという瞬間が訪れることないまま悲劇が起きても、たいして何も感じない。
これは感情移入出来なさすぎる私の問題かもしれないけど、恋愛映画なんかでもラブラブなシーンが多ければ多いほどキュンキュンしたり泣けたりするわけで…

たまに犯人が鑑賞者側に語りかける所とか、ラストカットのドヤ顔とか、クラシックからの急なロックとか、いかにも「どうだ!狂ってるだろ!鬼畜だろ!胸糞だろ!」と見せつけられているようでただただ冷める。
トムとジェリーだのデブちゃんだの、シリアス展開なのに急に幼稚なギャグみたいなことを言い始めるのも本当に冷める。

本当に怒りで涙が込み上げてきた。
もっと気持ち悪くあってくれよ、もっと鬼畜であってくれよ。
胸糞映画ランキングとか必ず入ってくるからゲロ吐くぐらい病む予定だったのに。
おかげさまでいたって健康体だから慰謝料払え、この野郎。


これが観賞後すぐの怒り狂ったレビュー。
若干深夜テンション。
で、納得がいかず色々考察したりされてるのを見たりして分かった。
この反応は完全に作り手の思惑通りなんだと。
この映画は全部無意味なのだ。
映画でありながら映画であることをやめた映画なのだ。
つまり映画を求めて観始めた時点で満足できるわけがない。
人々がどれだけ映画に期待をしているのか、それに対してのアンチテーゼ。
胸糞を望んでいた自分にもこの攻撃はかなり効いた。
この映画の明確な主題とは「現実は映画みたいに上手くいかない」ということ。
それはハッピーエンドとは限らないということに限定されず、予想していたようなバッドエンドとも限らないということ。
今まで観てきた色々な映画で身についた「こうなればこうなる」というルールみたいなものをことごとくぶち壊していく。
私が抱いてきた「ファニーゲームって胸糞映画としてめちゃくちゃ面白いんだろうな」という期待も躊躇なく裏切ってきた。
これはもう映画の域を超えた何か。
そう考えるとものすごく深く面白い作品に観えてくる。
ただ、呆れるほどつまらない。
物語性なんて全くない。
観て得られることも特にない。
だから観直そうとは全く思わないし、(胸糞だからという意味ではなく)おすすめもしない。
そんな映画。
ただ、USAリメイクは比較のために観たいかな。
ナオミ・ワッツとティム・ロスだし。

今回私の見方が180度変わった動画がこちら

https://youtu.be/PW7SZvy4S28