ロックウェルアイズ

X エックスのロックウェルアイズのネタバレレビュー・内容・結末

X エックス(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

1979年のテキサス。
スターになりたい女優のマキシーンは、仲間たちと田舎の農場へポルノ映画の撮影に向かう。
彼らは農場主に納屋を貸してもらうのだが、その農場主はなんだか怪しく不気味な老夫婦で……

タイ・ウェストのホラー愛に満ち溢れたA24ホラー。
予告映像ではほとんど内容が分からないため、現代の『悪魔のいけにえ』みたいな感じを予想したら、存分にオマージュはあるものの意外とオリジナリティの高い作品だった。
『悪魔のいけにえ』が大きな土台となっているのだろうが、それ以外にも往年の様々なホラー映画や名作へのオマージュに溢れている。
ストーリー自体はシンプルだが、そのシンプルさもまた恐怖映画の伝統を引き継ぐかのよう。
それでいて三部作なんだから笑っちゃう。

ドスケベおばあちゃん、愛を求めて…
この映画、マキシーンたちがメインのように思うが、本当の主人公はパールおばあちゃんなのだ。
本来、恐怖の主体にフォーカスが当てられることは少ないと思うが、本作では若さと愛に執着する老婆の悲しみみたいなものが伝わってきて、なんだかちょっと好きになってくる。
かと言って若者たちも若者たちでそんなに嫌いにはなれないし…
マキシーンとパールはまさかのミア・ゴスによる一人二役。
2人には共通点が多いが、その部分は今後どう描かれていくのだろうか。
個人的には、
もしパールがマキシーンの成れの果てのような姿ならば、またマキシーンもパールとなるのではないかと思っている。
つまり歴史は繰り返すということ。
白黒テレビやメイクの流行時期にズレが生じることや、昔の映画のオマージュやパロディを現代映画で行なっていることのように、歴史の時間軸で交差(X)があることにも繋がる。
Xには様々な意味があるというが、まだまだ何か未知なる意味が隠されていそうだ。

映画としてのセンスも大いに感じた。
車の“ヘッド”ライトが“レッド”ライトに変わるところや高速場面転換、対比、構成、構図と監督の裁量を感じる部分が多かった。
最後にみんなが一番観たかったであろう老夫婦のセックスシーンを持ってくるあたりもとても好き。
ラストシーンでの警官の「クソッタレのホラー映画じゃないか?」というセリフは少し自虐的で至高。
またキャストも良かった。
ミア・ゴスは今回もアクセル全開。
裸オーバーオールもクライマックスの剣幕も生き様も最高に推せる。
そして、この映画を代表するあの絶叫シーンを好演してくれたジェナ・オルテガも素晴らしかった。
どこかで見たことあると思ったらウェンズデーの子か。納得。

最初こそA24らしいお洒落映画感が強かったが、後半につれてマキシーンの生き様と同じように「私は私」を貫いてくれる。
ありきたりなんだけど唯一無二。
予想してたより何倍も良かった!
2作目の『Pearl パール』も結構面白そうなので3作目公開前までには観たい。