このレビューはネタバレを含みます
原作は山本直樹の『眠り姫』。国語科非常勤講師の青地と、その周辺をとりまく人物たちを描いた映画。全ての登場人物が声のみで出演し、音声を風景に重ねてまるでそこに人がいるかのように感じさせる不思議な映画。
寝て起きて、夢と現実を行き来する間に、だんだんその境目がぼんやりしてくる。朝の通勤は怠く、人混みはみんな薄っぺらい顔をしている。現実で向き合う野口先生の顔は長い。彼氏は冴えないマザコンで、自分の価値観を押し付けてくる。自分は眠ってばかりいるが故に、顔がどんどん丸くなってゆく…。
日常にひっそりと染み込んで行く狂気の生ぬるい温度を感じられる作品。
人の顔がまったく出てこない面白さを感じた。ただ、青地先生の髪型は原作に則ってショートカットが良かったなぁ…山本直樹の作品の良さがよく出ていたと思う。吉祥寺で撮影された風景も良かった。