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十二人の怒れる男のとがぴのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.4
1つのシチュエーションの中で会話だけで状況説明と進行がテンポ良く進み、想像の範疇の箇所が観客に余す事なく伝わる会話劇が心地良い。

被告人である少年、目撃者の女性と老人は台詞の中でしか存在しないにも関わらず、少年のアリバイに起こる疑問の余地、また女性と老人の状況証拠の曖昧さが全体の尺を通して何度も揺れ動く様子が興味深い。

無駄だと思う会話がなく、フットボールのくだりも現在の議論状況の暗喩と来たる結末の示唆に富んでおり、散りばめられた心理戦特有の感情が揺れ動くキッカケ、またそうなった時の役者の演技力と表現で楽しませてくれる。

これだけ多人数の中で暑く大雨も降り、煙草の煙が舞ってる環境の中で頭を使うディスカッションをしてればストレスが爆発し、癇癪を起こしたり、呆れたりする人もそりゃ出てくるよなと観てる側に納得させるキャラクターの運び方、また名もなき登場人物達の個性作りも優秀な映画。

落とし所に後味の悪さを残さず、名作と称賛される所以に納得。中々観ない白黒映画だったけど、良いものを観たというスッキリ感がありました。
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