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バルタザールどこへ行くのgcpのレビュー・感想・評価

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)
4.5
人生を振り返った時に、たった一瞬でも幸福だったと思えるひとときが誰しもあるでしょう。そのほんの一瞬の思い出だけに支えられているよう。バルタザールにとってその拠り所はマリーが子どもだった頃の記憶で、バルタザールの瞳がうつる度にその幸福なイメージが残像として見えてくるくらいだった。バルタザール、泣いているの?マリーも泣いている。飼われ捨てられ逃げては売られて、ほんとうにいったいどこへゆく?と揺さぶられながら最期を見届けることになった。世界は途方もなく広いのに、暮らしはいつも窮屈でさっき避けた石がすぐ飛んできそうな世界に在る。そこをぐるぐるめぐった旅の果てで、ラスト、眠りに就く場所にはちょうどよかった。生き物たちが当たり前に自然にそうであるように、すべての人間がささやかな幸福を慈しんで生きる世の中になったらいいのに、と涙するしかなかった。
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