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男はつらいよ 奮闘篇のエニグマのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 奮闘篇(1971年製作の映画)
4.3
7作目にして1番の傑作!
柴又に寅さんのお母さん・菊が帰ってくるも寅さんは喧嘩してしまい、またもや旅に出てしまう。そして旅先で知的障害を持つ女性・花子と出会う。

今まで登場人物の関係性(さくらの結婚や博の親等)以外は特に前作との関連性がなくゲスト扱いだったのに、ここに来て過去作に触れるとは!冒頭の会話で歴代マドンナの名前が挙げられたことや1作目のマドンナであり御前様の娘である冬子、2作目に出てきた寅さんの母親が出てきたことで、やっと地続きの物語であることを実感した。今までと構成も若干異なる異色作であることから、シリーズの1つの区切りとも取れる。そしてここまでの総括的なテーマでもあり、車寅次郎という男の核心に迫った脚本であった。
序盤のユニットバスで小便したりベッドの上で飛び跳ねる寅さんには笑った。
そんな精神的な幼稚さを見せる一方、中盤で花子の将来を案じて自分が一生面倒を見てやると覚悟を決めるところに寅さんの根っからの優しさが現れている。他の男を過剰なまでに近寄らせないところなどは怖いが笑
いい歳した寅さんが障がいもあってあまり自発的ではない少女と結婚しようとするあたりの描写は少々グルーミング(性犯罪者が未成年との信頼関係を築く準備行動)に近いんじゃないかとヒヤヒヤしたが、思えば寅さんは性欲とかよりも人情を優先する人であった。あと、時代性もあって知的障害に対する言葉遣いは差別的であるものの、とらやの人々は優しく寛容な態度だったので良かった。
そして最後、いつもはマドンナが別の人とくっついて終わりだが、今回は地元に帰って元の生活に戻ることで幸せを得るという特殊エンド。そして寅さんもそれを見届けに行く。おいちゃん達は自殺でもするんじゃないかと心配するが、探しに来たサクラに「死ぬわけねえよな!」と言い晴れ晴れとした道をバスが走るカットで幕を閉じる。寅さんの人の良さと楽観的な生き方、サクラとの絆を表現したとても良い終わり方だった。
そして、先生役で出てた田中邦衛もいかにも優しそうな先生で良かった。
総じて傑作!
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