広島カップ

道の広島カップのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.6
私が幼い頃過ごした東京の下町は、夕方になると街角の隅の方にはまだキチンと暗闇がありました。
夕方遅くまで外で遊んでいると……
「早く帰って来ないと、サーカス団のおじちゃんに連れてかれちゃうよッ」と、大正生まれの祖母には時折言われていました。

貧しい家庭に生まれ、笑顔が素敵で子供のままで大人になってしまったようなジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)が、イタリア各地を放浪しながらサーカス芸を見せるザンパノ(アンソニー・クイン)の元に金で買われて行くところからこの物語は始まります。

人を愛する気持ちはあってもその気持ちを上手に表出することが出来ない男と、自分は何も出来ない人間だと思っている女の道中の話。

ジェルソミーナに対して冷たく素っ気ないザンパノ。
これを観ている観客は劇中の殆どを、
「ザンパノ酷い奴、ジェルソミーナ可哀想」
と思ってスクリーンを見詰めているはずです。
「道端の小石だって何かの役にたっているよ」と言われて微笑む素直で健気な女。
愛して欲しい、抱き締めて欲しいと感じている女。

「ザンパ~~ノォ、モスコシ優シクシテヤレヨぉ~」

と公開当時、パンツェッタ・ジローラモさんみたいな情熱的なイタリア人でイッパイのあちらの映画館では、観客達が上映中にもスクリーンに向かって叫んでいたことでしょう。
※『ニュー・シネマ・パラダイス』観ていてそう思いました。

ザンパ~ノ、ピィ~ンチ!

ところがです。最後に来て武骨で粗野な大男が夜の暗い浜辺でサメザメと泣くではないですか……
一気に形勢逆転か?
不器用な男に対しては圧倒的にシンパシーを感じる私としては、感動のラストでした。

※600回記念
広島カップ

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