ざわわ

紅の豚のざわわのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
4.1
めちゃくちゃよかった。会話もテンポも小気味良く、クスッと笑える場面が多い。
画面の色味も質感も遊び心に溢れていて、見ている間ずっと楽しかった。
作品の根底に優しさが流れていて、登場人物にそれぞれの美学があり、描かれる人間関係は心意気に溢れている。

この物語の舞台は第二次世界大戦前のイタリア。恐慌の波が広がりつつあり、ファシスト党の独裁下で不穏な雰囲気漂う社会の中で、海や空を飛び回る飛行艇乗りの姿はのびのびと自由に、彼らが見る景色は美しく牧歌的に描かれている。

「カッコイイとは、こういうことさ。」
マルコは多分こんなセリフは言わない。
でもこのキャッチコピーがこの映画の全てを表していると思う。
紅い飛行艇で縦横無尽に空を飛ぶ、声だけめちゃくちゃダンディな小太りの豚。
どう考えてもコミカルな絵なのに、面白いどころか、本当にかっこいい。粋でいなせ。渋い。しびれる燻銀。いや燻豚…?ローストポーk…

死んでしまった仲間達、夫を失ったジーナ、その中で生き残ってしまった自分、これから続いていくだろう戦争。そんな中魔法をかけられて、マルコは突然豚になってしまった。自らが豚になってしまったことに対する悲壮感や必死感がないのは、なぜだろう?
その両肩に重い過去を背負いながら、両翼にロマンと美学を携えて風を切り、紅の豚は、アドリア海の美しい空を飛ぶ。
                     
ざわわ

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