ざわわ

風立ちぬのざわわのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.0
素晴らしかった。
大正から昭和へ、関東大震災や第二次世界大戦を経て大きく移りゆく時代の中で、
強い信念を持って生きた人たちの物語。
でもこれは単純な戦争映画ではないし、困難に努力で打ち勝っていく物語でもない。

たしかに大変な時代を生きた人たちの物語であるはずなのに、自分の生活を恨む気持ちとか、世知辛さに対する憤りとか、戦争や兵器に対する善悪の感覚とかは、ほとんど描かれていない。
“この時代を生きた人”を描くには、これがリアルな表現なのだと感じた。 

途方もなく遠い、目眩く“夢”を見た。
大きな風の中を、自分の作った美しい飛行機で飛ぶ夢。
ただ美しい飛行機を作りたかった少年は、この時代に生まれたことで、
多くの人間の命を奪う兵器を作るという残酷な宿命を背負うことになる。
呪われた夢を無自覚に追い求める彼の人生は、エゴイスティックで、純粋で、美しい。

風が吹き、帽子が飛ぶ。
帽子の描写がとても象徴的で、深く印象に残った。
人生には何度でも風が吹く。
追い風に吹かれ、つんのめりながら夢を追う時もあれば、
向かい風に立ち向かいながら、姿勢低く歩まなければならない時もある。
まだ風の吹く限り、夢を追い、生きねばならない。
ざわわ

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