shibamike

超高層のあけぼののshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

超高層のあけぼの(1969年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

高所恐怖症の横綱 曙(現:曙太郎)が、36階建て超高層ビルの屋上でぶつかり稽古を繰り返して高所恐怖症を克服し、ライバルの高乃花に勝利するというお話。
最初は3階、4階と低層階で稽古するのも大変だったのに、ひと月、ふた月と稽古を繰り返す内に階層を徐々に上げることができ、横綱のプライドを見せてくれた。
ビルの窓に干したふんどしが風で飛ばされて新幹線に貼り付くシーンと"超高層階は女人禁制"というのは笑った。
クライマックスにはビルの屋上で堂々とシコを踏み、高乃花に押し出しで競り勝って(高乃花は転落死)、晴れ晴れとした曙の顔をスクリーンいっぱいに拝め、さっぱりした気持ちで我々観客も劇場を後にした。みたいな話かと思ったら、全然違うかった。


日本で初めての超高層ビルらしい「霞ヶ関ビル(36階建て)」建設がいかに大変であったかというお話。タイトルの"あけぼの"というのは明け方とかさういう意味の"あけぼの"で、横綱のことではなかった。タイトルに勘違いして劇場に駆け込んだ相撲ファンは1人や2人ではない気がする。(0人だよ)

東京大学の偉い教授が考えた柔構造理論というもので超高層ビルは建設が実現したらしい。それまでビルというと剛構造理論というもので作っていたらしい。
東京大学の偉い教授を中村伸郎が演じていて、教え子として海外へ飛び回るサラリーマンの丹波哲郎がいるのだけれど、会話の内容が「インドネシアか。あそこは大変だ。」とか中身が空っぽの会話で、空々しかった。音楽を伊福部昭が担当していたり、とにかくオールスター映画だったのであらう。

劇場のチラシで本作の存在を知り、なんとなく面白さうと思い、特に気にせず鑑賞したけど、誤算だったのが横綱 曙の話ではなかったことと、もうひとつが上映時間が160分と長尺だったこと!映画中盤頃には自分の尿意が超高層ビル状態で(?)、超高層のあけぼのというか尿膀胱のサゲポヨであった(?)。
ギリギリおしっこは我慢できて、上映終了後、劇場の小便器に思いの丈を心ゆくまで叩きつけた。頻尿のあけぼの!

映画の前半第1部は超高層ビルの設計と建築材料開発のお話で、後半第2部は工事着工から竣工までを描いていた。
設計には設計の苦労、工事には工事の苦労がそれぞれあり、かういう業界で働いている人は興味深く鑑賞できる気がする。自分は建設業界で働いていないけれど、絶対にさういう業界で仕事をする能力はないなと思った。

憎き2枚目池部が鹿島建設の所長役を演じているのであるが、1000人以上もいる職人や作業員達の前で堂々としていて大したものであった。ああいう上司ならついていきたくなる。全体集会の時も片手にスピーカーでもう片方の手はズボンのぽっけに入れる感じカッコ良かった。

若かりし頃の古畑任三郎がクレーンのオペレーター役で出ているのだけれど、終盤に雷の脅威にさらされまくるシーンがあって、無理矢理絶体絶命感を出そうとしているのがひしひしと伝わってきて、観ていて切なかった。

この映画、基本的に超高層ビルを讃える映画であった。そして建設を実現した三井不動産、鹿島建設などの企業もカッコ良く映している。
"黒部の太陽"に比べると明らかに地味であったけど、実際快挙だったのでせう。
東京の都市計画的に超高層ビルは必要だったのかも知れないけれど、超高層ビルをありがたがっている人って案外それほど多くはないのではなからうか。自分はそんなに好ましく思っていない。
作品の中で鹿島の社員と東大教授が日本の未来を語り合うシーンがある。"東京の建物を上に伸ばし、空いたスペースに緑や自然を増やせれば…"みたいな感じ。そんなのなるわきゃないわな。

柴三毛 心の一句
「超高層 私の股関 超高層」
(季語:私の股関→熱い→夏)
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