ぐるぐるシュルツ

パンチドランク・ラブのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
4.0
自分が分からない、抑えきれない。
でも恋も同じ。

〜〜〜

ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品。
この映画、最近じわじわ評価され始めている印象で思わず鑑賞。
さながらアメリカの短編小説のような世界観で、ナンセンスユーモアと現実感の歪みに思わず引き込まれる。この世界の空気感はずっと吸っていたいほど心地よかった。

バリーは衝動的に暴れてしまう。
唐突に泣いてしまうし、誰かとうまく話せなくて、物覚えもあまり良くない。
しょっちゅうテンパる。
おそらくADHDのようなのだけれど、
いや、待てよ、と思う。
これは恋の症状と近似してはいないか。
しかも、正直いって、この世界の住人は99%少し変わっている人ばかり。
だからこそ、バリーの忙しない心の逡巡が目に見えて浮かんできても、全然おかしくなくて、共感できて、真っ直ぐで愛おしい。

愛する人のために、時間がかかっても一生懸命考えて、うまくいかなくてもやってみる。

「顔をぶん殴ってしまいたい」はさすがに笑うけど(笑)

そして、恋の相手役の
エミリー・ワトソンのキュートな演技もたまらない。

彼女に会いにいくバリー、彼女といるバリーはどのシーンをとっても名場面。
ミュージカルのような多幸感に、
思わずガッツポーズをしたくなるような突発的な甘い抱擁とキス。

劇中歌の『He needs me』に強烈に惹かれて調べてみたら、1980年の実写版ポパイの劇中歌らしい。歌うは、オリーブ役のシェリーデュヴァル。日本ではソフト化もされていないため見られないけれど(ちなみに監督はあのロバート・アルトマン!)本当に名曲。
その歌唱シーンはYouTubeで視聴できました。
ロマンチックすぎるね。

印象的なのはやっぱり、
ポスターのシーンまでの
淀みない流れ。止まらない想い。
映画の魔法!!
あんなん見たら、もう、なんか、
泣きそうになる。

バリーに本当に、いっぱいのマイルが貯まればいいなぁ。