majizi

憂鬱な楽園のmajiziのレビュー・感想・評価

憂鬱な楽園(1996年製作の映画)
4.0
ホウ・シャオシェン作品なのにあまり牧歌的でなく、
むしろ全員がうだうだしていて力の抜けた作品。

南国が舞台だし、やっぱり暑い夏の日にビールでも飲みながら

「まあガオより俺の(私の)人生はマシかも・・・」

なんつって中年男性の哀れさと滑稽さを見届けて
己のつまんない人生を慰めてください。
というのは嘘です。

邦題にもある通り、憂鬱だけど楽園なんです。
ガオも人生しゃかりきでもなければ
死ぬほど悩んでもないし
バイク乗ってイエ〜イみたいな
素晴らしい瞬間を生きています。

それでいて日々面倒ごとが細々起こるという
冴えないチンピラなんですけどね。
弟分の彼女(可愛い)はトイレのドア閉めないしさ。
ガオは綺麗好きなんですよ全く。

ナイトクラブで中華お決まりの下手くそカラオケとか
モッサいお姉さんたくさん登場するし
すぐ乾杯して大声出して今日は今日で過ぎるのです。
楽園だよね?

奥行きのある構図を固定カメラで
手前と奥での芝居が妙におかしくて(だいたいどっちかで喧嘩)
すごい傍観者の気持ちになれる。
そして何を見せられているんだろうという境地へ
(それは単なるチンピラの日常です)


電車、車、バイクとあらゆる乗り物からの長回しは
美しい風景と色、ゆっくりとした時間でとにかく美しい。
撮影の李屏賓(リー・ピンビン)はやっぱり天才だわ。
物語はラストまでグダグダしてて全く収集付いてないのに
あらゆるものを許す力を持っている。

ビー・ガンはもろにこの作品に影響を受けていて
「凱里ブルース」でこういうのを撮りたかったんだと思う。


あとひとつ付け加えておくとするならば
調和しているのかどうかわかりにくい
音楽の主張が大変強くて、悲劇でも喜劇でもなく
ダサい流行歌で盛り上がるのでめっちゃいい作品です。
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