回想シーンでご飯3杯いける

トレインスポッティングの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
2.8
続編「T2」を観るに当り、久々の再鑑賞。

実はこの作品はあまり好きではなかった。昨日まで登録していたレビューで僕はこう書いている。

「暴力やドラッグを題材にして、若さの衝動云々とか、1996年の映画としては発想が古すぎる。」

ヘロインや暴力の要素を持ち込んだストーリーはとても'70年代的で、あまり新しさを感じない。これは公開当初の率直な印象。しかし、あれから20年が経過し、ストーリーだけではなく、作品の存在自体も古くなった現代の視点で観ると、その辺りはあまり気にならなくなり、今回の鑑賞は以前より楽しめた。

本作はストーリーだけではなく、映像や音楽の演出による体感的な表現を中心に楽しむ作品であるという事。その観点で観れば、ユースカルチャーを題材にした後世の作品に与えた影響は無視できないだろう。

しかし、ストーリーや状況描写に於ける軽さは今でも気になるところで、例えば、例の赤ん坊の下り。母親が赤ん坊を可愛がるシーンが無いので、急死しても僕たちにその悲しみが伝わって来ない。堕落や絶望を描くには、どんな形でも良いので、作品が示す人生や幸福の基準を提示しておかないと、その世界観に入れない人は最後まで置いてけぼりを喰らう事になる。この点で「トレインスポッティング」は観客を選んでしまう作品であり、一部のファンに向けたお洒落映画の域を出ないと言うのが、当時と変わらない僕の評価である。

若者の衝動を描いた同時代の作品であれば「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」('97年)や、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」('98年)の方が圧倒的に良く出来ていると思う。(スコアは前回レビュー時より上方修正した)