せーや

ウィッカーマンのせーやのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.9
偉大なるキリスト教vs異教

失踪した少女の捜索のために
サマーアイル島にやってきたハウイー警部。
しかしそこでは誰もが口をそろえて
失踪したはずの少女を「そんな子はいない」と言う。

強烈な皮肉と恐怖でお届けするミステリー。

舞台はスコットランド沖の小さな島、サマーアイル島。
そこは「性」が神として崇められる異教の地。
そこにやってきたのは敬虔なクリスチャンの警部。

「正義」が警部かと思いきや
彼は「キリスト教の正義」だった。
捜索を進めていく中で見えてくる
サマーアイル島民の異様な信仰。

警部は彼らの宗教を否定し、非難する。
こうやって、キリスト教は人々を迫害したのだろうか。
そう思わざるを得ない皮肉な演出。

「少女を探す正義の警部」と「何かを隠している島民」
という表向きの対立構造と
「異教を差別するキリスト教信者」と「迫害される異教の民」
という裏の対立構造があるように思えます。

もちろん、失踪した少女を捜索するミステリーではあるんですが
次第にその捜索はおかしな方向へ。
そしてサマーアイル島の感謝祭「メイデー」で警部は真実を知る。

サマーアイル島民が野蛮に見えても仕方ないかもしれない。
でも「野蛮」という言葉は我々の勝手な差別なのかもしれない。
キリスト教が「正義」と誰が決めたのだろう。

ラストシーンはその象徴。
キリスト教と異教の対立を痛烈に皮肉った作品ではないでしょうか。

そんな難しい話だけではなく、
島民が崇拝する謎の宗教の教育や
シリアスなシーンから突然始まるミュージカルなど
少し滑稽さを感じる演出も見どころです。

いくら教育でも、外でセックスはやめましょう。

ブリット・エクランドが脱いでいるからという
軽い気持ちで見たはずが、予想外の衝撃でした。
せーや

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